フィリピンのお年玉文化に興味がある方、これから年末年始をフィリピンで過ごす方へ。
「アンパオ」と「ナマスコポ」の違い、渡す金額の目安、在住13年の筆者が実際に遭遇したリアルな体験まで、丁寧にまとめました。

フィリピンのお年玉「アンパオ」とは?
フィリピンには、日本の「お年玉」にあたる文化があります。
それが アンパオ(Ampao) です。
中国系フィリピン人の文化に由来する赤い封筒で、クリスマスから新年にかけて目上の人が子どもや若者に現金を入れて渡します。日本のお年玉と非常に近い慣習で、特に旧正月(チャイニーズニューイヤー)の時期に多く見られます。
西洋のクリスマス文化とも混ざり合い、今では年末年始全般にわたってアンパオ袋でプレゼントやお金をやり取りする文化として広がっています。
しかしこれがなかなか難しかったりするんですよね。
アンパオの背景にある中国系フィリピン人(チノイ)の文化や、お金の使い方の感覚については、
別記事でも掘り下げています。
ナマスコポとは?アンパオとの違いは?
ナマスコポ(Namasko po) は、アンパオとは少し異なります。
直訳すると「クリスマス・お正月なので、お恵みをください」という意味のタガログ語の挨拶です。
| アンパオ | ナマスコポ | |
|---|---|---|
| 意味 | お年玉・プレゼント | 施しをお願いする挨拶 |
| 誰から誰へ | 目上→目下 | 誰でも(見知らぬ人からも) |
| 形式 | 赤い封筒 | 口頭、または封筒 |
| 場面 | 家族・知人間 | 近所・路上・訪問者など |
つまり、アンパオは「渡す文化」、ナマスコポは「もらいに行く文化」 というニュアンスの違いがあります。
ナマスコポでいくら渡す?金額の目安
これが一番気になるところですよね。在住13年の筆者の経験をもとにした目安をまとめます。
| 相手 | 渡す金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 配達員・警備員など | 20〜50ペソ | チップ感覚でOK |
| 近所のよく知る子ども | 50〜100ペソ、またはギフト | お菓子やおもちゃでも喜ばれる |
| 日頃お世話になっている人 | 20〜100ペソ | 関係性に応じて |
| 見知らぬグループ | 渡さなくてOK | 一度渡すと増える可能性あり |
重要なポイント:一度渡すと「来年も期待」される場合があります。
渡す相手をあらかじめ決めておくことで、プレッシャーを感じにくくなります。
実際に聞いた、ナマスコポの怖い話
マニラから3時間ほど離れたケソン・プロヴィンスに実家があるBongさん。
朝、公園でいつも顔を合わせる友人です。
ある日、何気なく聞いてみました。
「年末はどこで過ごすの?」
するとBongさんは、少し困ったような顔をして、こう答えました。
「マニラにいるよ。実家には帰れないんだ。ナマスコポが、強烈で……。」
一回ね、田舎でナマスコポって言ってきた女の子に、お金をあげたんだ。
Bongさんは、そう前置きして話し始めました。
でも、直後にもう一人、二人って増えて……
次の日には10人。
1週間後には30人になってた。
そのあとは、もう怖くて人数を数えなかったよ。
家の前に、すごい人だかりができてさ。
外出もできなかったよ。
それだけでは終わりませんでした。
それ以来、次の年も、またその次の年も、
“期待している人たち”が集まってくる。
だから、もう決めたんだ。
年末年始は、実家には帰らないって。
例えば、配達員のおじさんが、荷物を届けに来たついでに
「ナマスコポ」と言って赤い封筒を差し出してくることは、よくあります。
そういう時に、チップ代わりとして20ペソや50ペソを
気持ちよく渡すのは、個人的には悪くないと思っています。
けれど、ナマスコポには
単なる「文化体験談」では済まされない側面も、確かにあります。
一度あげると、際限なく集まってくる恐怖。
貧困、宗教、共同体の圧力が絡み合った、あの重さ。
それは、
「境界線が崩れた体験」 でもあるのだと思います。
フィリピンのクリスマスは非常に長く、年明けまで続きます。新年になってもナマスコポは続くのです。
🎄ナマスコポで歌われる定番キャロルの歌詞と意味
ナマスコポで歌われるキャロルの意味
ナマスコポの場面で子どもたちがよく歌うクリスマスキャロルがあります。
(最近は歌わずに来る人の方が多くなりましたが…)
Sa may bahay ang aming bati
Merry Christmas na maluwalhati
お宅に向けて、私たちのご挨拶です
栄えあるメリークリスマスを
Ang pag-ibig, ’pag siyang naghari
Araw-araw ay magiging Paskong lagi
もし愛が支配するなら
毎日がいつもクリスマスになるでしょう
Ang sanhi po ng pagparito
Hihingi po ng aginaldo
私たちがここに来た理由は
お年玉(贈り物)をお願いするためです
Kung sakaling kami’y perwisyo
Pasensiya na ’pagkat kami’y namamasko
もしご迷惑でしたら
どうかお許しください
私たちはナマスコ(クリスマスの施し)を求めているのです
🎙️かなり直訳に近いニュアンスで言うと
この歌を、意味だけでまとめると、
実はかなりストレートです。
突然お邪魔してすみません
でも今日はクリスマスです
愛があれば、毎日がクリスマスです
とはいえ
今日はお金(または贈り物)をください
迷惑だったらごめんなさい
でも私たちはナマスコなんです
一見すると丁寧で、謙虚なお願いに聞こえます。
しかし同時に、この歌は
- 「来た理由はお金(aginaldo)だ」と明言し
- 「迷惑ならごめん」と言いつつ
- それでも行為そのものは正当化する
という構造を持っています。
フィリピンに長く住んでる日本人でも、
これに感化されたのか、クリスマス正月に関わらず
「ご迷惑おかけします」と言いながら
色々請求する行為を押し通す人は多い気がする…。
私が遭遇した、恐怖の「なますこぽ」
2025年、クリスマスイブの朝8時30分ごろのことです。
家の前に、知らないおじさんたちが5〜6人、立っていました。
クリスマスキャロルを歌うわけでもありません。
ただ、ポケットに手を突っ込み、貧乏ゆすりをし、
タバコをふかしながらニヤニヤしています。
そして一言。
「ナマスコポー」
手を突き出されました。
ここに住んで13年になりますが、
ナマスコポに対する違和感を、完全に消し去ることはできずにいます。
その1🎄田舎の峠道で、大勢の人に追いかけられる

田舎へ行くと、それはさらに強烈になります。
2年前の年末、リサール地方を訪れたときのことです。
峠のカーブごとに、きれいな服を着た子どもたちが
10人から15人ほど、固まって立っていました。
「クリスマスパーティーの帰りかな?」
そう思った次の瞬間、
スピードを上げて通り過ぎようとする車に向かって、
構わず走り寄ってきます。
「ナマスコポー!!」
その2🎄自治体による「なますこぽ検問」

もっと酷かったのは、その後でした。
自治体の職員たちが、勝手に検問を作り、
紐を張って道を塞ぎ、車を止めて、手を出してくるのです。
「なますこぽー」
これには、さすがに旦那も驚き、
怒りを抑えきれず、そのまま紐をぶっちぎって通り抜けました。
日本人の私たちにとっては、かなりギョッとする体験ですし、
フィリピン人であっても、程度によっては
抵抗を感じる人がいる文化だと思います。
ただ、あからさまに「嫌だ」と言えない。
強く否定もできない。
皆さんは、どう感じるでしょうか。
私たちが実践している、お互いに優しい「なますこぽ」
とはいえ、クリスマスは
できるだけ優しさを分け合いたい特別な時期でもあります。
固くなりすぎず、
自分たちも気持ちよく過ごすために、
私たちはいくつかのルールを決めて対応しています。
1.日頃お世話になっている人には、きちんと「なますこぽ」

警備員さん、犬を可愛がってくれる近所の作業員さん、
コーヒー屋さんのお兄さんなど。
普段から助け合いがあるので、
あらためてねだられることはありませんが、
何か改めて贈り物をしてもいいな、と感じた場合のみ、
20ペソ〜100ペソほどを包みます。
2.本当に助けが必要な人や動物には「もの」を渡す

雨風をしのげない犬には犬小屋。
ご飯が足りない家庭には食べ物。
文房具がない子どもにはノートと鉛筆。
お金よりも、感謝が伝わりやすいと感じています。
そしてただ闇雲に物をあげるのではなく、本当に日頃から付き合いのある人に限定します。
3.交流のある近所の子どもには、シンプルなギフト

子どもにはお金ではなく、
おもちゃや文房具、洋服などを渡します。
一度、ショッピングモールに行ったことがないという姉妹を
連れて行ったことがありますが、
テンションが上がりすぎて大変でした。
やはり、シンプルで高価ではないものが一番だと思います。
4.家族には「消え物」を

義父など、甘えがエスカレートしやすい人には、
食べ物や小さなお菓子を。
以前、靴を贈った際に
細かい要求が止まらなくなったことがあり、
それ以来、形に残るものは避けています。
フィリピンでは家族間のお金のやり取りが日常的に発生します。
仕送り文化やGCashの使い方については、
フィリピンの仕送り文化とGCash――日本人妻が実際に使ってわかったことにまとめています。
5.よく知らない人への対応は、フィリピン人家族に任せる
こういう場面では、無理をせず、ライアンに一任します。
文化を知り尽くしている家族に任せるのが一番です。
渡す場合も、身元がはっきりした相手に限定し、
1グループ20ペソ程度を目安にしています。
6.しつこい場合は「NO」と言う
一度対応したあと、
さらに家族を連れて戻ってくることもあります。
そういう場合は
「ワラ・ポ(ありません)」と言って立ち去ります。
曖昧にすると、翌年がもっと大変になります。
まとめ:文化だけど、無理をしすぎる必要はない
「郷に入っては郷に従え」という言葉があります。
特に、さまざまなソーシャルクラスや人種が共存するフィリピンという国では、
その「郷」自体が、私たちが思っている以上に複雑なレイヤーを持っています。
一人ひとりが違うマインドを持ち、違う背景の中で生きている個々の人間だからこそ、
ときに、うまくいかないことがあるのも自然なことなのだと思います。
日本で育った私たちが想像する「郷」と、
実際に暮らしてみて見えてくる「郷」は、
きっと同じものではないのでしょう。
そして、あなたが移民として暮らす側であれ、あるいは移民を受け入れる側であれ、立場は人それぞれ。
どんな文化や慣習にも、時代とともにアップデートされていく“常識”があります。
歩み寄ることは大切。
そして同時に、お互いの暮らしや、身と心を尊重し合えたら──そう願っています。
それは「謙虚さ」と言い換えることもできるのかもしれません。
後から苦しくならないためには、
自分の中に、そして相手との間に、
一定の線引きがどうしても必要なのだと思います。
フィリピン人パートナーともよく話し合い、
嫌な気持ちを溜め込まない工夫が大切だと思います。
せっかくのクリスマスとお正月。
できるだけ、穏やかに、楽しく過ごしたいですね。
文化の違いや価値観のすり合わせについては、
フィリピン人との結婚は大変?仕送り・手続き・文化の違いを経験者がリアルに語るも参考にしてみてください。

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