「フィリピン人ってどんな人たち?」と聞かれたら、何と答えますか。
バスケが好き、明るい、家族を大切にする——よく言われる言葉はいくつかあります。でも13年フィリピンに住んでいると、そのひとつひとつに「でも実際は……」という話が必ずついてくる。
今回は、フィリピン人の日常や文化によく見られるステレオタイプを、夫ライアンとの会話と私自身の体験をもとに紐解いていきます。
バスケットボールが好き
これは本当です。どこに行ってもバスケのリングがある。
私の住むサブディビジョン(分譲住宅地)にも当然コートがあるし、コートがない場所なら、木の板に輪っかをくくりつけたものを電柱に縛り付けて遊んでいる。それでいい、ということらしい。
私: なんでそんなにバスケが好きなの?
ライアン: アメリカの影響もあるけど、「貧者のスポーツ」って言われるくらいリングさえあればどこでもできるから。バレーボールはネットが要るし、コートのラインも引かないといけない。バスケはそのへんがシンプルなんだよ。
なるほど。道具もコートも要らない。あのひしゃげたリングでもバスケはバスケだ。
もう10年以上前のことだけど、ASEAN規模で国際バスケットボール大会があって、フィリピンナショナルチームが強豪国に勝利したことがありました。当時私たちの家にはテレビがなくて(今もないけど)、ライアンはわざわざ父親のところまで行って観戦していました。
「体は小さいけど心はでかい」とみんなで言って喜んでたって、笑いながら話してくれた。
ちなみに、ライアン本人はバスケが下手で、プレイもあまり好きじゃありません。
ステレオタイプは、すべてのフィリピン人に当てはまるわけじゃない——この話だけで十分証明できる気がします。
タンバイ文化
タンバイとは「スタンバイ」の略語らしいのですが、何をスタンバイしているのかよくわかりません。
ただ、必ずといっていいほど見るのは男性。女性がタンバイしているのはほとんど見かけない。昼間からビール。夜になってもビール。子どもの集まりでも、大人たちは外でビール。余裕があればカラオケ。
私が住む近くにはOFW(海外出稼ぎ労働者)が建てた豪邸がたくさんあって、子どもたちが月一、週一ペースで一族と飲み会をするルーティーンがあります。でもなぜか家の中で飲みたがらない。
ライアン: 単純に家の中が暑いから外の方が気持ちいい。それに外にいると友達や知り合いが通りかかるじゃない?声をかけて、また輪が広がる。タンバイって、ある意味「社交の釣り」みたいなものなんだよ。
外を通りかかった人を自然に巻き込んでしまう——これはフィリピンのインクルーシブな文化ならではだなと思います。
一度、ライアンと北海道に帰省したとき、彼がこんなことを言っていました。
ライアン: なんでタンバイスポットがないのかほんと不思議。椅子すら外にないんだね。こんなに気持ちいいのに。
確かに北海道の夏は気持ちいい。実家では夏にジンギスカンを外でやることもあるけど、それはイベントに近い話で、日常的に外で過ごすというフィリピンの感覚とはやっぱり違う。
ちなみに、ライアン自身は友達と外でビール片手にタンバイはしません。ポーチで犬たちや私と座って話すくらい。これもまた、ステレオタイプどおりではない話です。
フィリピン地方に広がるOFW豪邸文化については、こちらの記事で詳しく書いています。
→ 建てたら終わり?フィリピン地方に広がる豪邸ゴーストタウンの実態
フィリピン流おもてなしの本質
フィリピン人はホスピタリティが高い、とよく言われます。確かにそうだと思います。でも少しだけ、補足が必要です。
カインタヨという社交辞令
フィリピンでは、食事中に知り合いと顔を合わせると「カインタヨ(一緒に食べましょう)」と声をかける文化があります。
ただ、実際に「じゃあお呼ばれしようかな」と席につこうとすると、びっくりされます。人数分しか用意がないのだから当然といえば当然。
私: なんで実際には来てほしくないのに言うの?
ライアン: それは日本でいう社交辞令と同じだよ。でも言わないとやっぱり変なんだよね。
なるほど。日本にも似たような文化はある。でも知らないと戸惑う。
私の知人に、フィリピン人の夫と日本人の妻のカップルがいます。ある日ご飯を食べているとき夫の家族が来て、妻がカインタヨと言わなかったと夫が怒っていたそう。文化として知らなければ言えるわけがない。夫がちゃんと説明してあげないとダメだよ、と思った出来事でした。
ステータスによって変わるおもてなしの温度
13年住んでいて感じるのは、ソーシャルステータスが上がるほど「おもてなし」より「うちがどれだけ裕福かを見てほしい」という空気になっていくことがあります。
逆に、経済的に苦しい家庭でいただいたおもてなしの方が、一緒に美味しいものを食べようという温かさがあって、記憶に残っている。全部が全部じゃないけれど、そういう肌感はあります。
外国人だからという特別扱い
外国人だから特別に受ける扱いがある、というのも正直なところです。多くの外国人はそれをホスピタリティと捉えるのだと思います。
でも私には素直に喜べない瞬間が、実はあります。
夫がフィリピン人なので、夫婦なのに扱いが違うことがあるんです。以前は特にそれを感じることがありました。一緒にいるのに私だけ別の扱いを受ける。それが嬉しいかといえば、そうじゃない。
ライアンが言っていたように、フィリピン人のおもてなしの根っこにあるのは「一緒に楽しむこと」。深く考えず、善意で動いている。それはわかっています。それでも、ちょっとだけ複雑な気持ちになることもある——というのが正直なところです。
SNSと外国への好奇心
フィリピン人のSNS利用率は世界トップクラスです。街を歩いていると、女優さんかというようにポーズが決まっている人たちをよく見かける。ある人のアカウントを見たら、同じポーズの写真が何十枚も投稿されていて、そのこだわりに少し圧倒されました。
ライアン: フィリピン人は自己愛が強くて自分大好きな人が多いけれど、同時にそれを自分に強制してるようなところがある気がするよ。僕らフィリピン人は、同胞に一番差別的だからね。肌が黒い、鼻がデカくて潰れてるとか。どこかで自分たちはどの人種よりも下だと思っているからじゃないかな。
これはずっしりくる言葉でした。
イェン・コンスタンティーノさんの「Chinito」という曲は、日本や韓国ではネガティブにされがちな「目が細い」外見を良いものとして歌った曲で、白い肌・細い目・高い鼻がもてはやされる文化があります。肌が白くてヨーロッパ系の外見の人を見れば「アメリカ人だからいい」、日本は素晴らしい国、韓国はおしゃれ、フランスも素敵——外国のものが優れているという意識が、豊かな人の中にも根づいているとライアンは言います。
「なんでフィリピンに住んでるの?日本はあんなに素敵な国なのに」と聞かれることも多い。
私がこのブログを始めたかったのも、実はここが出発点でした。
フィリピンにはいいところがたくさんある。でも地元の人たちがそれをなかなか築いていない。確かに大変な国ではあるけれど、私から見たこの国の素敵なところを伝えたい——そう思ったからです。
ちなみに、日本が好きというフィリピン人は本当に多い。「今年大阪に行くよ」「ニポンゴ、シャベレマス」「Japan is amazing!」——日本に夢を抱いている人たちに毎日のように会います。
まとめ:ステレオタイプは入口にすぎない
バスケが好き、タンバイが好き、おもてなしが得意、SNSが大好き——どれも確かにある話です。
でも同時に、バスケが下手で好きじゃないライアンがいて、タンバイより犬と家の外で話すのが好きなライアンがいて、外国人の自分が複雑な気持ちになるおもてなしもあって、自己愛と自己嫌悪が同じ人の中に共存していたりする。
フィリピン人を一言で説明しようとするほど、「でも実際は……」という話が必ず出てきます。
それがフィリピンという国の面白さで、私がここを離れられない理由の一つかもしれません。
フィリピン人男性の特徴については、こちらもあわせてどうぞ。
→ フィリピン人男性の特徴
ライアンの発言は会話をもとに再構成しています。

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