ライアンと結婚したとき、「フィリピンは離婚できない国なんだ。
本当に死ぬまで添い遂げるんだなあ」とぼんやり思いました。
それから13年。夫婦仲は良好ですが——正しい情報は 知っておいて損はない、と思って調べたことをまとめます。
私はフィリピン・カビテ州在住の日本人。フィリピン人の夫と ふたりで暮らしながら、周りのセパレーション事情も それなりに見てきました。
法律の専門家ではありませんが、 生活者として知っておくべきことを、わかりやすく解説します。
- フィリピンで離婚できない3つの理由(宗教・法律・費用)
- フィリピン人の実態:なぜほとんどがセパレーション止まりなのか
- 日本人との国際結婚の場合の離婚手続きと費用(3ステップ)
フィリピンで離婚できない理由【3つのポイント】
結論から言うと、フィリピンには一般的な民事離婚制度がありません。フィリピン人同士が婚姻を解消したい場合は、「婚姻取消(Annulment)」という別の制度を使うことになります。
ただし「一切できない」というわけでもありません。ムスリム法が適用される婚姻には別途の離婚制度があり、また外国人との国際結婚では例外的なルートが存在します。
「フィリピンは離婚できない」という言い方は大まかには正しいのですが、状況によって話が変わります。日本人との国際結婚の場合については、このあと詳しく説明します。
私とライアンは離婚しませんが、将来のために(?)詳しく見ていきましょう。
なぜフィリピンでは離婚できないのか
① カトリックの教えが法律になっている
フィリピンはアジアで唯一のカトリック主流国で、国民の約80%がカトリック教徒です。カトリックの教えでは、婚姻は神の前で結ばれた生涯の契約であり、「人は神が合わせられたものを引き離してはならない」という聖書の言葉がそのまま社会規範になっています。
この価値観は法律にも色濃く反映されており、1987年に制定されたフィリピン共和国憲法でも、婚姻と家族の保護が明文で規定されています。政教分離の原則はあるものの、教会と政治の境界線は実際のところかなり曖昧です。
ちなみに現在、世界で離婚を法的に禁じている国はフィリピンとバチカン市国の2カ国のみ。バチカン市国は国民がほぼ聖職者ですから、一般市民が暮らす国としては実質的にフィリピンだけということになります。
② Annulment(婚姻取消)という抜け道はあるが……
「じゃあどうしても別れたい場合は?」という話になりますが、フィリピンには「Annulment(婚姻取消)」という制度があります。これは「離婚」ではなく、「そもそもその結婚は最初から無効だった」と裁判所に認めてもらう手続きです。
問題は、その費用と時間です。
弁護士費用や心理学的評価(「配偶者に精神的不能があった」と証明するために必要)などを合わせると、費用は80〜130万円以上。期間は早くて1〜2年、長引けば5年以上かかるケースもあります。フィリピンの平均月収が3〜4万円程度であることを考えると、これは庶民にはほぼ手の届かない金額です。
③ だから実態は「セパレーション(別居)」止まり
法律的にも経済的にも離婚が難しい結果として生まれているのが、「事実上の別居状態」です。法律上はまだ既婚のまま、でも別々に暮らして、それぞれが新しいパートナーと事実婚で暮らしている——というケースが非常に多い。
私の周りのフィリピン人の知人たちも、みなセパレーション止まりです。Annulmentまで進んだ人は一人もいません。「離婚できない国」というより「離婚できる制度が庶民には手の届かない場所にある国」というのが、実態に近いと思っています。
状況によっては一時帰国を検討する方も多いと思いますが、出国前の準備も重要です。
👉 一時帰国チェックリストはこちら
変わりつつある?離婚合法化の動き
じつは近年、離婚合法化に向けた議論が活発になっています。2024年5月、フィリピン下院は離婚を認める法案を可決しました。DVに苦しむ女性たちの声が大きな後押しになっています。
ただし上院ではカトリック教会の影響が強く、法案の先行きはまだ不透明です。NHKの国際報道でも2025年に特集が組まれるほど注目を集めているテーマですが、法制化されたとしても厳しい条件が設けられる可能性が高く、即座に「誰でも気軽に離婚できる国」になるわけではないでしょう。
この問題は現在も進行中ですので、大きな動きがあれば随時この記事でもアップデートします。
最短理解!国際離婚の全体フロー
日本人とフィリピン人の国際結婚の場合、離婚は可能です。ただし手続きは日本だけでは完結しません。大きく分けて3つのステップが必要です。
フィリピン人 × 日本人の国際結婚の離婚は、ざっくり言って、次の3段階です👇
協議離婚・調停・裁判のいずれかで、日本の法律に基づいて離婚を成立させます。この時点で日本人側は法的に独身になります。
日本の離婚はフィリピンでは自動的に認められません。フィリピンの裁判所に「外国離婚承認(Recognition of Foreign Divorce)」を申し立てる手続きが必要です。
PSAの記録を更新する 裁判で承認が下りたら、フィリピンの戸籍機関PSAに反映させます。これが完了して初めて、フィリピン人配偶者も法的に独身扱いになります。
👉この3ステップをすべて終えて、はじめて国際離婚が完全に成立します。以降のセクションで、それぞれの詳細を説明していきます。
フィリピンで婚姻を解消する主な方法
フィリピンで婚姻を解消する方法は、主に3つあります。日本人との国際結婚には直接関係しないものも含みますが、「フィリピンの離婚事情」を理解するうえで知っておくと役立ちます。
婚姻取消(Annulment)
フィリピンで最も一般的な婚姻解消の方法です。「離婚」とは異なり、「そもそも婚姻に最初から問題があった」ことを裁判で証明する制度です。費用は100万〜300万円以上、期間は2〜5年以上かかるケースも多く、精神的・経済的な負担が非常に大きいのが現実です。
婚姻無効(Declaration of Nullity)
重婚や近親婚など、婚姻自体が法律上無効であることを宣言する手続きです。Annulmentと似ていますが、無効の理由が異なります。
ムスリム法上の離婚
フィリピン国内でも、ムスリム法(P.D. No. 1083)が適用される婚姻については、一定の条件のもとで離婚が認められています。ただしこれは特定の宗教・地域に限られた制度です。
日本人との国際結婚の場合、上記3つではなく「外国離婚承認(Article 26)」というルートを使います。次のセクションで詳しく説明します。
日本の離婚はフィリピンに自動反映されない
日本で離婚が成立すると、日本人側はその時点で法的に独身になります。
ところがフィリピン側では、日本の離婚をそのまま認める仕組みがありません。
つまり日本で離婚届を出した後も、フィリピンの記録上はふたりが「既婚」のままになります。この状態を放置すると、フィリピン人配偶者は再婚できないだけでなく、フィリピン国内での法的な手続きにも支障が出ることがあります。
「日本で離婚したからもう終わり」と思っていたら、実はフィリピン側が未処理のままだった——というケースは少なくないようです。
この問題を解決するのが、次のセクションで説明する「外国離婚承認(Article 26)」です。
なお、フィリピン在住で13Aビザを持っている方は、離婚成立後の滞在資格も別途確認が必要です。
→ 離婚後の13Aビザはどうなる?切替の流れを見る
外国離婚承認(Article 26)とは
フィリピン家族法第26条(Article 26)は、外国人配偶者が有効に離婚を成立させた場合、フィリピン人配偶者もその離婚の効果を受けられるとする規定です。これを根拠に、フィリピンの裁判所が日本の離婚を「承認」する手続きが行われます。
2018年の最高裁判決(Republic v. Manalo)以降、この制度の解釈は広がっており、日本の協議離婚のような行政手続きによる離婚も承認の対象になり得ることが示されています。
Annulmentと混同されることがありますが、まったく別の手続きです。
| 項目 | 外国離婚承認(Article 26) | Annulment |
|---|---|---|
| 費用 | 約20万〜50万円 | 100万〜300万円以上 |
| 期間 | 約6ヶ月〜1年 | 2〜5年以上 |
| 対象 | 国際結婚 | フィリピン人同士 |
日本人との国際結婚であれば、Annulmentを選ぶ必要はほぼありません。費用・期間ともに、外国離婚承認の方が現実的な選択肢です。
なお費用・期間はあくまで目安です。地域や弁護士、案件の内容によって差があります。
日本での離婚とフィリピン側の承認手続きは別ですが、
13Aビザを持つ日本人側は、滞在資格の切替も早めに確認しておくと安心です。
→ 13Aビザの切替タイムラインを確認する
手続きの流れ
全体の流れをSTEP順に説明します。なお手続きの詳細は案件や地域によって異なるため、実際には専門の弁護士への相談をおすすめします。
協議離婚であれば、離婚届を市区町村に提出するだけで成立します。話し合いがまとまらない場合は調停・裁判へと進みます。この時点で日本人側は再婚可能な状態になります。
フィリピンでの手続きに必要な書類を準備します。
- 離婚の記載がある戸籍謄本
- 離婚届受理証明書
- 英文翻訳
- アポスティーユ(外務省による公文書証明)
費用の目安は1万〜5万円程度です。翻訳を自分で行うとかなり節約できます。
フィリピン人配偶者の居住地、または婚姻が登録された地域の地方裁判所(RTC)に申し立てます。多くの場合、フィリピン人配偶者が申立人となり、フィリピン側の弁護士に依頼して進めます。
裁判所が確認するのは「日本の法律に基づいて有効に離婚が成立しているか」という法的な事実のみです。不倫の有無や離婚の理由は関係ありません。
裁判所が承認すると「この外国離婚を承認する」という判決が出ます。期間は一般的に6ヶ月〜1年程度ですが、地域や裁判所によって差があります。
判決をPSA(Philippine Statistics Authority)に提出し、婚姻証明書に「婚姻は外国離婚により解消された」という注記を入れます。これが完了して初めて、フィリピン国内でも法的に独身扱いになります。
費用と期間の目安
手続き全体にかかる費用と期間の目安をまとめます。いずれも地域・弁護士・案件の内容によって大きく異なるため、あくまで参考値としてご覧ください。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| フィリピン側弁護士費用 | 100,000〜250,000ペソ |
| 裁判関連費用 | 10,000〜40,000ペソ |
| 日本側書類準備 | 1万〜5万円 |
| PSA更新費用 | 数千〜10,000ペソ程度 |
| 合計(目安) | 約20万〜50万円前後 |
弁護士費用は知人紹介などで下がるケースもあります。また日本側の書類翻訳を自分で行うと、費用をかなり抑えられます。
| ステップ | 目安 |
|---|---|
| 日本での離婚成立 | 協議離婚なら数日〜数週間 |
| 日本側書類の準備 | 2〜4週間程度 |
| フィリピンでの裁判 | 6ヶ月〜1年程度 |
| PSA更新 | 判決後1〜2ヶ月程度 |
| 合計 | 約1年〜1年半が目安 |
Annulmentと比べるとどう違う?
| 項目 | 外国離婚承認(Article 26) | Annulment |
|---|---|---|
| 費用 | 比較的安い | 非常に高額 |
| 期間 | 約6ヶ月〜1年 | 2〜5年以上 |
| 精神的負担 | 小さい | 大きい |
| 成立率 | 高い | 不確実 |
👉 日本人が関わる国際結婚の場合、
Annulmentを選ぶケースはほぼありません。
フィリピン人との離婚でよくある質問
- 日本人×フィリピン人カップルの離婚率はどのくらい?
-
国が公式に発表した統計はありませんが、複数の調査データによると日本人同士よりやや高い傾向が示されています。ただし調査時期・方法によって数値にばらつきがあるため、参考程度にご覧ください。
統計・調査種別 数値(参考値) 国際結婚全体の離婚率(日本) 約50% 日本人夫 × フィリピン人妻 約40〜60% 日本人女性 × フィリピン人男性 約60〜68%(推計) 文化・言語・生活習慣の違いが影響していると考えられています。
- 日本人×フィリピン人カップルの離婚率はどのくらい?
-
国が公式に発表した統計はありませんが、複数の調査データによると日本人同士よりやや高い傾向が示されています。ただし調査時期・方法によって数値にばらつきがあるため、参考程度にご覧ください。
文化・言語・生活習慣の違いが影響していると考えられています。
- 離婚後、13Aビザはどうなる?
-
離婚が成立すると13Aビザの法的根拠が消滅します。即座に失効するわけではありませんが、早めにBureau of Immigrationへ相談し、観光ビザなどへの切り替えが必要です。詳しい手続きとタイムラインは「→ 離婚後の13Aビザ切替について」をご覧ください。
あわせて読みたい
【2026年最新情報】フィリピン13AビザACR-i Card更新の流れと解説 フィリピン国内に住む、頭のネジがちょっと緩んだ日本人の皆さん、こんにちは。今日は、フィリピン人との結婚で取得できる永住ビザ(13A)のACRカード更新の流れを、詳… - 離婚後の財産はどう分けるの?
-
日本では婚姻中に築いた財産を清算して分けるのが基本で、半分が目安とされています。年金分割や請求期限(2年)にも注意が必要です。フィリピン側では婚姻財産制の種類によって扱いが異なるため、現地の弁護士への確認をおすすめします。
- フィリピン人は本当に離婚が一切できないのですか?
-
「一切できない」は少し正確ではありません。フィリピン人同士の婚姻に関しては一般的な民事離婚制度がなく、婚姻を解消したい場合はAnnulment(婚姻取消)という裁判手続きが必要です。ただし費用・期間ともに非常に重く、現実的には多くの人がセパレーション(別居)状態のままにとどまっています。なお、外国人との国際結婚の場合は別のルートがあります(この記事で詳しく解説しています)。
- AnnulmentとDivorce(離婚)は何が違うのですか?
-
最大の違いは「婚姻の扱い」です。Divorceは「有効だった婚姻を終わらせる」手続きですが、Annulmentは「その婚姻はそもそも最初から無効だった」と宣言する手続きです。つまりAnnulmentが認められると、法律上は「結婚していなかった」ことになります。フィリピンでは宗教的な理由から「離婚」という概念自体が制度として存在せず、代わりにこのAnnulmentが実質的な婚姻解消手段として使われています。
- 日本で離婚すれば、フィリピン側でも自動的に離婚になりますか?
-
なりません。日本で離婚が成立した時点で日本人側は法的に独身になりますが、フィリピンの記録上はふたりが「既婚」のまま残ります。フィリピン人配偶者が法的に独身に戻るためには、フィリピンの裁判所に「外国離婚承認(Recognition of Foreign Divorce)」を申し立て、PSA(フィリピン戸籍機関)の記録を更新する手続きが別途必要です。「日本で離婚したからもう終わり」と思って放置しているケースは少なくないので注意が必要です。
- 離婚後、フィリピン人配偶者は再婚できますか?
-
上記の「外国離婚承認」手続きが完了すれば、フィリピン人配偶者も法的に独身として扱われ、再婚が可能になります。逆にこの手続きを経ていない場合、フィリピンの法律上はまだ既婚状態のままなので、再婚しようとしても重婚とみなされるリスクがあります。
- フィリピンに住んでいる日本人が離婚する場合、手続きはどこで行いますか?
-
まず日本の法律に基づいて日本側で離婚を成立させ(協議離婚・調停・裁判のいずれか)、その後フィリピンで外国離婚承認の手続きを行う流れになります。フィリピン在住で13Aビザを持っている方は、離婚成立後のビザの切り替えについても別途確認が必要です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→ 離婚後の13Aビザはどうなる?切替の流れ - フィリピン人配偶者とうまくやっていくには?
-
フィリピン人との国際結婚をこれから考えている方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
→ フィリピン人と結婚する男の特徴|体験談から見えたこと
まとめ|フィリピン人との離婚で知っておくべきこと
フィリピンには一般的な民事離婚制度がありません。ただし日本人との国際結婚であれば、日本で離婚を成立させることは可能です。
大切なのは「日本で離婚すれば終わり」ではないという点です。フィリピン側でも外国離婚承認(Article 26)の手続きを完了させて初めて、フィリピン人配偶者も法的に独身扱いになります。
手続きの全体像をおさらいすると、以下の3ステップです。
- 日本で離婚を成立させる
- フィリピンで外国離婚承認(Recognition of Foreign Divorce)を申し立てる
- PSAの記録を更新する
費用は一般的に20万〜50万円前後、期間は1年〜1年半が目安です。Annulmentと比べると現実的な選択肢ですが、地域や弁護士によって差があるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
「知らなかった」だけで選択肢を失わないために、この記事が少しでも役に立てれば嬉しいです!

フィリピン(海外生活・情報)ランキング
にほんブログ村

