フィリピンには一般的な民事離婚制度がありません。ただし、日本人との国際結婚であれば、日本で離婚を成立させることは可能です。
私とライアンが結婚したとき、「フィリピンは離婚できない国なんだ。本当に死ぬまで添い遂げるんだなあ」とぼんやり思ったものです。それから10年。夫婦仲は良好ですが、正しい情報は知っておいて損はない——そう思って調べたことをまとめました。
この記事では、なぜフィリピンで離婚できないと言われるのか、そして日本人との国際結婚の場合に必要な手続きの流れと費用をわかりやすく解説します。
フィリピンでは本当に離婚できないのか
結論から言うと、フィリピンには一般的な民事離婚制度がありません。フィリピン人同士が婚姻を解消したい場合は、「婚姻取消(Annulment)」という別の制度を使うことになります。
ただし「一切できない」というわけでもありません。ムスリム法が適用される婚姻には別途の離婚制度があり、また外国人との国際結婚では例外的なルートが存在します。
「フィリピンは離婚できない」という言い方は大まかには正しいのですが、状況によって話が変わります。日本人との国際結婚の場合については、このあと詳しく説明します。
私とライアンは離婚しませんが、将来のために(?)詳しく見ていきましょう。
離婚を認めていない国、フィリピン。しかし…
最大の理由は、カトリック教会の影響が非常に強い国であることです。フィリピンはアジアでも数少ないキリスト教が主流の国で、国民の約80%がカトリック教徒とされています。
カトリックの教えでは、婚姻は神の前で結ばれた生涯の契約とされており、離婚は原則として認められていません。この宗教的な価値観が法律にも色濃く反映され、一般的な民事離婚制度が導入されないまま現在に至っています。
私とライアンが結婚したとき、義母から「結婚は一生のものよ」と言われたことを今でも覚えています。フィリピンでは離婚は法律の問題である以前に、文化や信仰に深く根ざしたものなのだと、一緒に暮らしてみて実感します。
最短理解!国際離婚の全体フロー
日本人とフィリピン人の国際結婚の場合、離婚は可能です。ただし手続きは日本だけでは完結しません。大きく分けて3つのステップが必要です。
フィリピン人 × 日本人の国際結婚の離婚は、ざっくり言って、次の3段階です👇
協議離婚・調停・裁判のいずれかで、日本の法律に基づいて離婚を成立させます。この時点で日本人側は法的に独身になります。
日本の離婚はフィリピンでは自動的に認められません。フィリピンの裁判所に「外国離婚承認(Recognition of Foreign Divorce)」を申し立てる手続きが必要です。
PSAの記録を更新する 裁判で承認が下りたら、フィリピンの戸籍機関PSAに反映させます。これが完了して初めて、フィリピン人配偶者も法的に独身扱いになります。
👉この3ステップをすべて終えて、はじめて国際離婚が完全に成立します。以降のセクションで、それぞれの詳細を説明していきます。
フィリピンで婚姻を解消する主な方法
フィリピンで婚姻を解消する方法は、主に3つあります。日本人との国際結婚には直接関係しないものも含みますが、「フィリピンの離婚事情」を理解するうえで知っておくと役立ちます。
婚姻取消(Annulment)
フィリピンで最も一般的な婚姻解消の方法です。「離婚」とは異なり、「そもそも婚姻に最初から問題があった」ことを裁判で証明する制度です。費用は100万〜300万円以上、期間は2〜5年以上かかるケースも多く、精神的・経済的な負担が非常に大きいのが現実です。
婚姻無効(Declaration of Nullity)
重婚や近親婚など、婚姻自体が法律上無効であることを宣言する手続きです。Annulmentと似ていますが、無効の理由が異なります。
ムスリム法上の離婚
フィリピン国内でも、ムスリム法(P.D. No. 1083)が適用される婚姻については、一定の条件のもとで離婚が認められています。ただしこれは特定の宗教・地域に限られた制度です。
日本人との国際結婚の場合、上記3つではなく「外国離婚承認(Article 26)」というルートを使います。次のセクションで詳しく説明します。
日本の離婚はフィリピンに自動反映されない
日本で離婚が成立すると、日本人側はその時点で法的に独身になります。
ところがフィリピン側では、日本の離婚をそのまま認める仕組みがありません。
つまり日本で離婚届を出した後も、フィリピンの記録上はふたりが「既婚」のままになります。この状態を放置すると、フィリピン人配偶者は再婚できないだけでなく、フィリピン国内での法的な手続きにも支障が出ることがあります。
「日本で離婚したからもう終わり」と思っていたら、実はフィリピン側が未処理のままだった——というケースは少なくないようです。
この問題を解決するのが、次のセクションで説明する「外国離婚承認(Article 26)」です。
なお、フィリピン在住で13Aビザを持っている方は、離婚成立後の滞在資格も別途確認が必要です。
→ 離婚後の13Aビザはどうなる?切替の流れを見る
外国離婚承認(Article 26)とは
フィリピン家族法第26条(Article 26)は、外国人配偶者が有効に離婚を成立させた場合、フィリピン人配偶者もその離婚の効果を受けられるとする規定です。これを根拠に、フィリピンの裁判所が日本の離婚を「承認」する手続きが行われます。
2018年の最高裁判決(Republic v. Manalo)以降、この制度の解釈は広がっており、日本の協議離婚のような行政手続きによる離婚も承認の対象になり得ることが示されています。
Annulmentと混同されることがありますが、まったく別の手続きです。
| 項目 | 外国離婚承認(Article 26) | Annulment |
|---|---|---|
| 費用 | 約20万〜50万円 | 100万〜300万円以上 |
| 期間 | 約6ヶ月〜1年 | 2〜5年以上 |
| 対象 | 国際結婚 | フィリピン人同士 |
日本人との国際結婚であれば、Annulmentを選ぶ必要はほぼありません。費用・期間ともに、外国離婚承認の方が現実的な選択肢です。
なお費用・期間はあくまで目安です。地域や弁護士、案件の内容によって差があります。
日本での離婚とフィリピン側の承認手続きは別ですが、
13Aビザを持つ日本人側は、滞在資格の切替も早めに確認しておくと安心です。
→ 13Aビザの切替タイムラインを確認する
手続きの流れ
全体の流れをSTEP順に説明します。なお手続きの詳細は案件や地域によって異なるため、実際には専門の弁護士への相談をおすすめします。
協議離婚であれば、離婚届を市区町村に提出するだけで成立します。話し合いがまとまらない場合は調停・裁判へと進みます。この時点で日本人側は再婚可能な状態になります。
フィリピンでの手続きに必要な書類を準備します。
- 離婚の記載がある戸籍謄本
- 離婚届受理証明書
- 英文翻訳
- アポスティーユ(外務省による公文書証明)
費用の目安は1万〜5万円程度です。翻訳を自分で行うとかなり節約できます。
フィリピン人配偶者の居住地、または婚姻が登録された地域の地方裁判所(RTC)に申し立てます。多くの場合、フィリピン人配偶者が申立人となり、フィリピン側の弁護士に依頼して進めます。
裁判所が確認するのは「日本の法律に基づいて有効に離婚が成立しているか」という法的な事実のみです。不倫の有無や離婚の理由は関係ありません。
裁判所が承認すると「この外国離婚を承認する」という判決が出ます。期間は一般的に6ヶ月〜1年程度ですが、地域や裁判所によって差があります。
判決をPSA(Philippine Statistics Authority)に提出し、婚姻証明書に「婚姻は外国離婚により解消された」という注記を入れます。これが完了して初めて、フィリピン国内でも法的に独身扱いになります。
費用と期間の目安
手続き全体にかかる費用と期間の目安をまとめます。いずれも地域・弁護士・案件の内容によって大きく異なるため、あくまで参考値としてご覧ください。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| フィリピン側弁護士費用 | 100,000〜250,000ペソ |
| 裁判関連費用 | 10,000〜40,000ペソ |
| 日本側書類準備 | 1万〜5万円 |
| PSA更新費用 | 数千〜10,000ペソ程度 |
| 合計(目安) | 約20万〜50万円前後 |
弁護士費用は知人紹介などで下がるケースもあります。また日本側の書類翻訳を自分で行うと、費用をかなり抑えられます。
| ステップ | 目安 |
|---|---|
| 日本での離婚成立 | 協議離婚なら数日〜数週間 |
| 日本側書類の準備 | 2〜4週間程度 |
| フィリピンでの裁判 | 6ヶ月〜1年程度 |
| PSA更新 | 判決後1〜2ヶ月程度 |
| 合計 | 約1年〜1年半が目安 |
Annulmentと比べるとどう違う?
| 項目 | 外国離婚承認(Article 26) | Annulment |
|---|---|---|
| 費用 | 比較的安い | 非常に高額 |
| 期間 | 約6ヶ月〜1年 | 2〜5年以上 |
| 精神的負担 | 小さい | 大きい |
| 成立率 | 高い | 不確実 |
👉 日本人が関わる国際結婚の場合、
Annulmentを選ぶケースはほぼありません。
フィリピン人との離婚でよくある質問
- 日本人×フィリピン人カップルの離婚率はどのくらい?
-
国が公式に発表した統計はありませんが、複数の調査データによると日本人同士よりやや高い傾向が示されています。ただし調査時期・方法によって数値にばらつきがあるため、参考程度にご覧ください。
統計・調査種別 数値(参考値) 国際結婚全体の離婚率(日本) 約50% 日本人夫×フィリピン人妻 約40〜60% 日本人女性×フィリピン人男性 約60〜68%(推計) 文化・言語・生活習慣の違いが影響していると考えられています。
- 離婚後、13Aビザはどうなる?
-
離婚が成立すると13Aビザの法的根拠が消滅します。即座に失効するわけではありませんが、早めにBureau of Immigrationへ相談し、観光ビザなどへの切り替えが必要です。詳しい手続きとタイムラインは「→ 離婚後の13Aビザ切替について」をご覧ください。
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-
日本では婚姻中に築いた財産を清算して分けるのが基本で、半分が目安とされています。年金分割や請求期限(2年)にも注意が必要です。フィリピン側では婚姻財産制の種類によって扱いが異なるため、現地の弁護士への確認をおすすめします。
まとめ|フィリピン人との離婚で知っておくべきこと
フィリピンには一般的な民事離婚制度がありません。ただし日本人との国際結婚であれば、日本で離婚を成立させることは可能です。
大切なのは「日本で離婚すれば終わり」ではないという点です。フィリピン側でも外国離婚承認(Article 26)の手続きを完了させて初めて、フィリピン人配偶者も法的に独身扱いになります。
手続きの全体像をおさらいすると、以下の3ステップです。
- 日本で離婚を成立させる
- フィリピンで外国離婚承認(Recognition of Foreign Divorce)を申し立てる
- PSAの記録を更新する
費用は一般的に20万〜50万円前後、期間は1年〜1年半が目安です。Annulmentと比べると現実的な選択肢ですが、地域や弁護士によって差があるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
「知らなかった」だけで選択肢を失わないために、この記事が少しでも役に立てれば嬉しいです!

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