フィリピンに13年以上住んでいると、日本からの友人や知り合いの方からよくこんな質問をもらいます。
フィリピン英語って、ちゃんと通じるの?
なんか訛りがあるって聞いたけど……
そういう話は今でもよく目にしますが、ぶっちゃけると、「人による。私は英会話界隈では自分が底辺の底辺にいるんだから、先生に多少の訛りがあろうとなかろうとどうでもいい。予算で受けられる授業ならそれに越したことはない」と考えていました。今もそう思います。なぜならそれは「使ってナンボ」だからです。
フィリピンに住みながら、いろんな国の人と仲良くなった私たちがだす、その答えは…
「アメリカ英語が神っていうわけじゃないよねー」です。
英語は話すフィリピン人によって違う。基本的な文法がおかしいひともいれば、訛りのきつい人もいるし、綺麗な英語を話す人もいる。それはどの国の人たちも一緒なんですよ。
今回は夫のライアン(フィリピンでTESOLを取得した英語教師)に直接インタビューする形で、フィリピン英語の成り立ちと特徴について話を聞いてみました。
フィリピン英語の「ルーツ」はどこにある?

ライアンによると、フィリピン英語の歴史はアメリカによる植民地時代にさかのぼります。
フィリピンの英語教育はアメリカが占領していた時代に始まったよね。アメリカに統治される前は、フィリピン人は各地の現地語とスペイン語を話していた。その名残で僕のママ、まだスペイン語を話すでしょ?だからベースはアメリカ英語なんだけど、その前の影響がしっかり残ってるよ。
そのため、フィリピン英語の響きはどこかラテン的なニュアンスを持つと言います。
フィリピン英語はメキシコ人の話す英語に似て聞こえることがある。メキシコもスペインに征服された歴史があって、アメリカと密接に繋がっているという共通点があるからね。
こうした歴史的な重なりが、フィリピン英語独特の響きを生んでいるわけです。
私が出会った、衝撃的なオンラインフィリピン英語教師たち
私がフィリピン英語に初めて本格的に触れたのは、来比する前に受けていたオンライン英語スクールでのことでした。そこはフィリピン大学の学生さんが先生として教えてくれるスクール。
うちの旦那の含め、優秀な先生たちがいっぱいいました。真面目な人もいれば、不真面目なやつもいた。
でも、なんていうか良くも悪くも人としてお話をいっぱいすることができたんですよね。
英語の話し方を学びながら、単純に「日本の人じゃない人たちと話す」経験は重要でした。度胸がついたと思う。
そのなかに、フィリピン訛りをあえて前面に出したり、衝撃的にアクの強い先生がいたんです。
俺の訛りは絶対直さないぜ先生
タグリッシュっていって、タガログ語と英語を混ぜた言語を僕ら話すんだ。これで世の中に出てる。タガログ訛りのアクセントは僕の誇り。アメリカ人に似せようとはしないよ。
その言葉を聞いて、ある意味「まあそうかのかな」と思いました。アメリカ英語がすべてではないし、その考えはすごく自然だと感じたので。
ただ、訛りがかなり強いとさすがに聞き取れないことも。タガログ語では「はひふへほ」と「ぱぴぷぺぽ」の音が混在というかスイッチするのですが、その先生が「Firefox(ファイアフォックス)」と言うと、「パイヤープロックス」になる。思わず笑ってしまって、申し訳ないことをしたなと今でも思います。
その後、その先生が信仰する宗教に勧誘されそうになったので、泣く泣く別の先生を選ぶようになりました。
銃撃された身内をテーブルに寝かせて教える先生
もうひとつ、今でも覚えているのがセブ出身の女先生のレッスン。
画面越しに先生の後ろが見えたんですが、食卓テーブルの上に人が寝かされていて、周りを家族がとり囲んでいるんです。あまりにも異様なので「えっ、どうしたの彼。どちら様…?」と聞いてみたら、「いとこなんだけど、外で銃で撃たれて死にそうなの」というではありませんか!
「ちょ…英語の授業どころじゃないじゃない」という私の混乱をしってか知らずか、「ハァーイ」とまばらに手を振って挨拶してくる家族たち。そのいとこは残念ながら助からなかったそう。
その後、金銭的な助けを求められたので、泣く泣く別の先生を選ぶことにしたのでした。
(こういう場合送金しちゃダメですが 👉 フィリピンへの送金が気になった方はこちら)
でも、これも「フィリピンという国の現実」のひとつで、英語学習とは全然別の意味で忘れられない体験になりました。
👉 フィリピンで実際に起きたトラブルと教訓
この次に出会ったのが、うちの旦那くんだったんですよね。
「訛り」に正解はない——でも、ビジネスは別の話
フィリピン英語を語るときに避けられないのが「アクセント(訛り)」の話。
ライアンはこう言います。
フィリピン人にとって英語は公用語であっても母国語じゃない。後から身につけた言語だから、アクセントが出るのは避けられない。でもアクセントというのは、本当に主観的なもので、議論の余地がある話だと思ってる。
さらに面白いことを言っていました。
アメリカ人はイギリス英語に訛りがあると言うけど、イギリス英語の方が歴史が古いわけじゃない?だとしたら、どちらが”訛っている”かなんて、一概には言えないよね。結局、アクセントへの評価は、自分がどう感じるかという主観でしかない。
確かに。「正しいアクセント」の基準自体が、政治的・歴史的な力関係によって決まっている部分がある。そう考えると、「フィリピン英語は訛っている」という評価も、絶対的なものではないと気づかされます。
ただ、目的によっては話が変わります。
たとえば韓国の生徒たちは、一流企業や有名大学で印象を残したいという目的がある。だからアメリカ英語に近い発音を身につけようとする。それは——ビジネスだよ。成功のチャンスを高めたいなら、ビジネスの言語を話す必要があるわけでね。
この「ビジネス」というひと言が、妙に腑に落ちました。アクセントへの好みや理想は人それぞれでも、それをどこまで磨くかは「何のために英語を話すか」という目的次第ということ。
オーソドックスな英語と言えばイギリス英語ですが、イギリスだってスコットランドからロンドンまで、アクセントの多様さは相当なもの。その土地で話されているすべての英語が「英語」であって、それぞれのアクセントを理解できてこそ、本当の意味で英語能力が高い、と言えるんじゃないかなと思います。
※私はそのレベルには達してないです。例えばアイルランドの人や、バーミンガムの人の英語などは字幕がないと理解ができません…。
ちなみに、フィリピン英語が日本人にとってわかりやすい理由のひとつは、日本語と同じシラビック(音節ベース)な言語構造を持っているから、っていうのが私の肌感。皆さんはどう考えますか?
フィリピン英語は「正しい英語」を教えられる?
「フィリピン人が教える英語って大丈夫なの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
これについてライアンははっきり言います。
言語は常に進化するものだし、変化し続けるのは知ってる。でも教師として、単語が伝統的にどう使われ、どう発音されるべきかをちゃんと知っておくのは義務だと思ってる。個人としての表現の仕方は自由だけど、教える立場としては、フォーマルでクラシックな英語をしっかり知っていなければいけないよ。
現代の課題として彼が挙げたのが、インターネットの影響です。
今の若者はSNSやネットを通じてスラングには強い。でも読み書きを含む学術的な英語の知識が弱くなっている。これはフィリピン人だけじゃなく、ネイティブスピーカーにも言えることだよ。
英語を「自然に話せる」ことと「きちんと書ける・読める」ことは別物——これは世界共通の課題なのかもしれません。
たしかになあ。綺麗な英語を話すとして知られるスウェーデンの知り合いの子も、読み書きはちょっと苦手だっていってたもんなあ。
ちなみに、ライアンがこの「教師としての義務」を意識するようになった背景には、フィリピンでのTESOL取得経験があります。その話も別記事に書いているので、気になる方はあわせてどうぞ。
👉 フィリピンでTESOLを取得した話|大学中退夫婦の体験談と費用のリアル
フィリピン人の先生にオンラインで英語を習うのってどうなの?
日本でもフィリピン人の先生によるオンライン英語スクールはすっかり定番になりましたよね。私自身、来比前にそういったスクールを使っていたひとりです。
実際に使ってみて感じたメリットをまとめると、こんな感じ。
まず聞き取りやすいこと。前述のとおり、フィリピン語(タガログ語など)は日本語と同じ音節ベースの言語なので、英語の発音も日本人にとって耳に入りやすいです。アメリカ英語やイギリス英語に比べて「何を言っているかわからない」という場面が少ないと感じました。
次に先生の質。良い先生はとってもいい。真面目な先生は本当に真面目なのでね。
共感力も高い人も多い。あなたに辛抱強く付き合ってくれる人もたくさんいるはず。
英語の教育が優れいているかはちょっとわからないです。 ライアンもいうように、フィリピンだけじゃなく全体的に英語の学術的な知識は下がってきてるという話もあります。しかし、小さな頃から英語に接して生活しているので、膨大な情報量の中で生きている。
ただ、正直に言うと先生によって当たり外れはあると感じます。「パイヤープロックス」の先生のように、訛りがかなり強い方もいますし、逆にライアンのようにニュートラルでクリアな発音の先生もいる。オンライン英会話のいいところは、好きな先生を複数試せること。まずは体験レッスンを活用して、自分に合う先生を探すのが近道だと思います。
言語は「共感できる相手」によって使い分けるもの
最後にライアンに「英語とタガログ語、どちらが心地よい?」と聞いてみました。
両方、今はほぼ同じくらい使えると思う。
クミと暮らしてるから、今は頭が完全に英語がメインになってる。
たまにタガログ語が口から出てきにくいこともあるもん。
夢は英語で私も見る!!
でも、フィリピン人同士で話すときはタガログ語が一番しっくりくるよ。タガログ語は、フィリピン人と共感(relatable)しやすい言語だから。英語はどちらかというと、外国人と繋がるための言語。つまり、誰と共感したいかによって、言語を使い分けている感じ。
この「共感(relatability)」という言葉が、すごく印象に残りました。言語は単なるコミュニケーションツールではなく、「自分が誰と繋がりたいか」を表すもの、という考え方。
フィリピンは東南アジアの中でも英語が広く使われる国のひとつ。フィリピン英語は「アメリカ英語の劣化版」ではなく、歴史と文化と多様な言語が重なり合って生まれた、ひとつの独立した英語のかたちです。
そしてそれは、日本人にとって意外と聞き取りやすく、親しみやすい英語でもあります。
次回は「日本人と英語の関係」について、ライアンの目線からまとめます。「正しく言えないなら、話さない」という日本人の習性をどう見ているのか——お楽しみに。

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