最近、フィリピンのNBIクリアランス(無犯罪証明書)の更新について色々調べていました。NBIクリアランスは年ごとの義務ではなく、必要になったタイミングで取得するものなので、今のところ自分には急ぎの用はありません。それでも、いつか向き合うことになるはずなので、今のうちに調べておくことにしました。
調べながらずっと頭をよぎっていたのが、以前自分のACR-Iカードを更新しに行ったときに味わった、なんとも理不尽な経験です(詳しくはビザ更新の記事に書きました)。記録上、旦那のライアン(フィリピン人)の国籍が「日本」と誤って登録されていて、ライアンがその場にいたにもかかわらず、身分証のコピーを公証したものを提出して証明する羽目になりました。明らかに向こうの不手際だったのに、責任をこちらに押し付けられるというものでした。
今日はその経験から学んだ「私が思うフィリピンの行政システムとの付き合い方」を、NBIクリアランスの話とあわせて書いてみようと思います。
そもそもNBIクリアランスの更新って何?
NBIクリアランスは、フィリピンでの各種ビザ手続きなどに必要になる無犯罪証明書のようなものです。ありがたいことに、条件さえ満たしていれば、オンラインだけで完結して自宅まで配送してもらうことも可能になっています。
大まかな条件はこんな感じです。
- 2014年以降に発行された古いクリアランス(またはNBI ID番号)を持っている
- 前回から氏名や生年月日などの個人情報に変更がない
この2つを満たしていれば、わざわざオフィスに行かなくても、ネットで手続きして家で受け取れる。日本の感覚だと「便利になったな」で終わる話です。
この「便利さ」、実はいつから始まったのか
そもそも、このドア・ツー・ドア配送サービスが始まったのは2021年6月のことです。当時のNBI副長官が「新しいオンラインポータルを通じて、より多くのフィリピン人が必要なクリアランスを容易に取得できるようになる」と発表したのがきっかけでした。
そして今回この記事を書こうと思ったのも、実はつい最近のニュースがきっかけです。NBIが「eClearance」という新しいデジタルサービスを始め、eGovPHという政府の統一プラットフォームと連携することで、対象者はわずか5分程度でクリアランスの申請ができるようになったというのです。
「また便利になったんだ、良かったね」で終わればいいのですが、私の頭に真っ先に浮かんだのは「また新しいシステムが増えた」ということでした。新しい仕組みが増えるということは、それだけ新しい不具合や、現場が運用に慣れていない期間が生まれるということでもあります。便利になったニュースを素直に喜べない、この自分の反応こそが、今日書きたかったことの本題だったりします。
オンライン更新(Quick Renewal)の流れ
条件を満たしている場合、大まかな流れはこうです。
- NBI公式ポータルにアクセスし、「NBI Clearance Online Renewal」を選択する
- 古いクリアランスに記載されているNBI ID番号、氏名、生年月日、電話番号などを入力する
- 受け取り方法で「Delivery(配送)」を選び、届けてほしい住所を入力する
- GCashやクレジットカード、コンビニ払いなどで支払いを済ませる(基本手数料+システム利用料+配送料で、目安は数百ペソ程度)
- 通常5〜10営業日ほどで、指定した住所にクリアランスが届く
手続き自体はシンプルなのですが、外国人の場合はここに注意点がいくつか加わります。
外国人ならではの落とし穴
まず、前回登録した氏名の表記(ミドルネームの有無など)と、1文字でも違うとシステムが本人だと認識してくれず、オンライン更新自体が弾かれてしまいます。
さらに厄介なのが「HIT」と呼ばれる状態です。同姓同名の人物に犯罪歴や係争中の記録がある場合、システム上で自動的に「要検証」のステータスになり、配送での受け取りが保留になります。こうなると、結局オフィスに出向いて本人確認をするしかありません。外国人の名前はアルファベットの並びの関係で、このHITに引っかかりやすい傾向があるとも言われています。
ステータスは、ポータルの「Transactions」から「Check Status」を押せば確認できます。「Printed / Ready for Release」と出ていれば無事クリア、「HIT」や「For Verification」と出ていたら、審査のためにさらに時間がかかると思っておいたほうがいいです。
オンライン化が進むほど、逆にトラップが増える不思議
NBIに限らず、フィリピンの行政手続き全般で感じるのが、オンライン化が進むほど「どこに罠が仕掛けられているか分からない」という怖さもセットで増えていくことです。
先進国のオンライン化は人為的ミスを減らすために導入されますが、フィリピンの場合、システムだけ新しくなって現場の運用が追いついていない、というケースが多い印象です。よくあるパターンを挙げると、
- オンラインで決済まで終えたのに、窓口では「データが届いていない」と言われる
- 予告なしの仕様変更で、昨日まで動いていた手続きが急にエラーになる
- 「オンラインで完結」と謳っていても、結局は画面を印刷して持参しないと受け付けてもらえない
というあたりでしょうか。デジタル化されているようで、最後は紙とスタンプがものを言う。この中途半端さが、余計に混乱を生んでいる気がします。
「きちんと更新する」ことが、逆に危ないかもしれない?
住所が変わった、パスポート番号が変わった。日本の感覚なら、こういう変更はすぐに公的な記録に反映させるべきだと思いますよね。でも、フィリピンだと話は逆かもしれない、と最近本気で思うようになりました。
理由はだいたい3つあります。
1. 役所同士のデータ連携がとにかく雑
NBI、イミグレーション(移民局)、税務署……フィリピンの行政機関は基本的に縦割りで、データがきれいに連携されていません。
たとえばNBI側だけ新しいパスポート番号にアップデートしたとして、イミグレーション側にまだそのビザの「移し替え」(スタンプの移行)が反映されていなければ、番号が食い違って「不法滞在を疑われる」「追加の証明書を出せと言われて手続きが数ヶ月ストップする」なんてことが本当に起こり得ます。
2. 「寝た子を起こす」リスク
一度システムが「要確認」のステータスに入ってしまうと、それを解除するのに膨大な時間と労力がかかる。これはフィリピン在住者なら「あるある」だと思います。
これまで問題なく通っていたものを、律儀にアップデートした結果、逆にシステムがバグって、何度もオフィスに呼び出される羽目になる。良かれと思ってやったことが裏目に出るパターンです。
3. 個人情報がどこに流れるか分からない怖さ
政府機関のシステムから個人情報が流出するニュースも、フィリピンでは珍しくありません。実際、2023年には政府の健康保険機関PhilHealthがランサムウェア攻撃を受け、最終的に4,000万人以上の個人情報が流出したことが確認されています。配送で受け取る場合、住所やパスポート番号が配達員にまで筒抜けになること自体、警戒している外国人は多いはずです。
こういう警戒心を持つようになった原点は、冒頭で触れたACR-Iカードの一件です。「正しい情報を提出したはずなのに、なぜか自分が悪者にされる」という感覚は、フィリピンで公的手続きをしたことがある人なら共感してもらえるんじゃないかと思います。
個人情報がオンラインでカジュアルに売り買いされているこの国。行政機関ならきちんとしてるだろう、という考えも通じないのが悲しいところ。
「郷に入っては郷に従え」の落としどころ
じゃあどうするのが安全なのか。今のところ自分の中で出している結論は、
「完璧に正しい最新情報」を目指すより、「今ある手続きが一番エラーを起こさずに通過する状態」を優先する
ということです。
具体的には、
- 引っ越しても、配送で受け取る必要がなければ住所はあえて書き換えない
- イミグレーション側でビザの移し替えが済んでいないなら、NBI側も古いパスポート番号のままにしておく
- 古いパスポートは絶対に処分せず、現物とスキャンデータの両方を保管しておく
古いパスポートについては特に、過去の入国スタンプやビザの証明として「唯一の証拠」になることが本当に多いです。データが消えたり間違って登録されたりしても、現物さえあれば言い返せる。これは強くおすすめしたいポイントです。
更新するなら、ACR-IとNBIどちらが先?
もし色々な情報を更新する必要が出てきた場合、順番も大事なポイントです。NBIクリアランスの申請では、外国人の場合ACR-Iカードの情報を参照することが求められます。つまりACR-I(イミグレーション側)が「元データ」で、NBIはそれを参照する側。なので、
イミグレーション(ACR-I)→ NBI
の順番で正しておくのが理にかなっています。ACR側の情報が間違ったままNBI側だけ更新すると、参照元がそもそも間違っているので、後から食い違いが表面化するリスクが残ってしまいます。
パスポート番号が古いまま、ACR-Iカードを放置していいのか
新しいパスポートに切り替えたけれど、まだ一度も国外に出ていない、つまりビザの「移し替え(スタンプの移行)」がまだ行われていない、という人もいると思います(私自身がそうです)。
こういう場合、あわててACR-Iカードの番号だけ新しいものに書き換えるのはおすすめしません。イミグレーション側の手続き(スタンプの移し替え)が済んでいない段階で番号だけ先行させると、イミグレーションとACRのデータの間に新しい食い違いを自分で作ることになるからです。
パスポートの失効や更新自体は、ビザの有効性には影響しないとされていて、渡航の際は「有効なビザが押された古いパスポート」を、新しいパスポートと一緒に携帯すればいいことになっています。永住ビザ(13A)の場合、わざわざ再スタンプの手続きをせず、この「新旧2冊携帯」で対応している人も多いようです。
なので、次回国外に出る予定ができたときの動き方としては、
- 古いパスポート(原本)を必ず一緒に持っていく
- 空港やBIで「2冊携帯で問題ないか」を一度確認しておく
- その後、必要であればイミグレーション側でスタンプの移し替えを行い、それが済んでからACR-I、NBIの順に情報を更新する
という流れが一番エラーを起こしにくいと思います。
今後の自衛策として決めていること
これから何かオンライン手続きをするときは、次の3つを自分ルールにしようと思っています。
- すべてスクリーンショットに残す:入力画面、エラー画面、決済完了画面、リファレンス番号まで、全部記録しておく
- 期限の2ヶ月前から動く:「オンラインだからすぐ終わる」という油断は禁物
- 紙の印刷をケチらない:発行された控えは念のため紙でも保管する
いつかNBIクリアランスが必要になる日のこと、そして数年後のACR-iカードの更新を考えると、今から少し気が重いのは正直なところです。でも、ルールは数年でガラリと変わるものなので、今から悩みすぎても仕方がない。その時が来たら、また落ち着いて向き合おうと思います。
この記事はNBIクリアランスの制度説明ではなく、あくまで個人の経験と気づきをまとめたものです。手続きの詳細は必ずNBI公式サイトなど最新の情報でご確認ください。

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