フィリピンで読んでよかった日本のKindle本5選|日本とフィリピンが繋がった本

フィリピンで読んでよかった日本のKindle本5選|日本とフィリピンが繋がった本
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フィリピンに住んで13年になりますが、日本語の本を読む環境は正直かなり不便です。

日本語の本がたくさんある本屋さんはないし、ある図書館は一件だけでアクセスが悪い。日本から取り寄せようとすると、送料が本代を余裕で超えてくる。

そのかわり、Kindleがあります。VPNさえあれば日本のAmazonで買った本がその場で読めるので、これだけで海外の読書環境はかなり変わりました。

今回紹介する5冊は、「ためになった本ベスト」というより、フィリピンで読んだから刺さった本です。日本にいたら、たぶん手に取らなかったか、同じようには響かなかったと思う。

夫ライアンとの生活、フィリピンという国との日々の格闘、そのど真ん中で読んだ5冊を紹介します。

目次

① 不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか|鴻上尚史 著

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書) Kindle版
鴻上尚史著

この本を最初に知ったのは、Kindleじゃなくて、マニラの日本料理屋さんに置いてあった漫画版でした。

不死身の特攻兵 (ヤングマガジンコミックス) Kindle版
鴻上尚史 (著), 東直輝 (著) 
不死身の特攻兵 (ヤングマガジンコミックス) Kindle版
鴻上尚史 (著), 東直輝 (著) 

ちなみに夫いわく、漫画版に書かれているタガログ語、結構間違っているらしいです。
それはそれで味があるというか…。

読み始めてすぐ、ちょっと待って、となりました。

主人公の佐々木友次さんの出身地が、私の故郷・北海道当別町だったんです。しかも私が通っていた学校のある弁華別・茂平沢のエリア。そして彼が戦ったのがマニラやバタンガスのあるルゾン島。
今の私が住んでいる場所で、故郷の人が命がけで戦っていた。しかも、神風特攻隊「万朶隊」の一員として。

そして彼は、条理に合わない上官の命令を無視して、9回特攻し9回生還したんです。

これ、めちゃくちゃロックじゃないですか。

特攻隊という、おそらく人類史上最高レベルの同調圧力がかかる場所にいながら、それを凛と跳ねつけて合理的に生き延びた人。死ぬために飛ばされたのに、生きることを選んだ人。

なのに、地元にいた頃、授業で習った記憶が一切ない。誰も私たちに佐々木さんの話をしなかった。
それが最初、正直ちょっとショックでした。

漫画を読みながら、夫ライアンにこの話をしたんですよね。すると「おじいちゃんがゲリラ兵士で、日本兵にボコボコにされて、おばあちゃんはそんな兵士たちから家族を守るために日本語を勉強したんだよ。その孫に当たる僕らがマニラで仲良くご飯食べてるなんて…感慨深いねぇ。」と言い出して。

日本人の特攻兵と、フィリピン人のゲリラ兵。同じ戦争の、反対側にいた人たちの話を、マニラの日本料理やさんで日比カップルがしている——なんか、すごい状況だなと思いました。

明るい話ではぜんぜんないです。でも日本とフィリピンがこんなふうに交差するのか、と気づかせてくれた一冊。フィリピン在住の日本人には特に読んでほしい本です。


② 見果てぬ祖国|ホセ・リサール 著、村上政彦 翻訳

フィリピンの英雄、ホセ・リサールの代表作『ノリ・メ・タンヘレ』と『エル・フィリブステリスモ』をまとめた一冊です。厳密には翻訳というより翻案作品。

見果てぬ祖国 Kindle版
ホセ・リサール 、 村上 政彦
見果てぬ祖国 Kindle版
ホセ・リサール 、 村上 政彦

実は英語版を読もうと頑張っているんですが、これがかなり手強い。現代英語じゃないし、スペイン語やラテン語が混じっていて、辞書を引きながら、ときどきライアンに聞きながら、まだ継続中です。

Noli Me Tangere (Touch Me Not) (English Edition) Kindle版
Noli Me Tangere (Touch Me Not) (English Edition) Kindle版

英語版を読んでいると、風刺が強烈でスパイシーで、読んだ後に辛いものを食べた後のような爽快さがあるんです。例えばこんな描写があります。ちょっと頑張って訳してみました。

人間というのは基本的にカメのようなもので、外側、つまり見た目で自分や他人の価値を測る生き物だ。そしてフィリピン人は、それが特に顕著である。

上の部屋は広く、今日は食事と音楽のためのホールになっている。中央には豪華なテーブルが鎮座しており、タダ飯を狙う者には天国のように映るが、素朴な人間にはひたすら居心地の悪い空間だ。

壁には宗教画が並ぶ。煉獄、地獄、最後の審判——なかなか食欲をそそるラインナップである。さらに大きな絵があり、「病気の女を訪れる聖母」という題らしいが、その病人の描写があまりにも生々しく、腐りかけの死体にしか見えない。趣味は悪いが、妙にリアルだ。

天井からは中国風のランプ、装飾品、空の鳥かご、干からびた植物や魚などがぶら下がっており、統一感というものが一切ない。別の部屋には客たちが大きな鏡とシャンデリアに囲まれている。立派なピアノもあるが、誰も弾いていない。そして壁には堂々たる男性の肖像画。その表情はまるで語りかけてくるようだ。「どうだ、私はこんなに立派で洗練されているだろう」と。

家具はどれも高級だが、座り心地は悪く、この気候にもまるで合っていない。家の主人は客の快適さより「高級感」を優先するタイプらしい。「赤痢で倒れるかもしれないが、ヨーロッパの椅子に座れるんだからいいじゃないか」とでも言いそうな人物だ。

ホセ・リサール「ノリ・メ・タンヘレ」第一章より

これ、今でも普通にあるんですよ。

「高価なピアノがあるが誰も弾いていない」「趣味は悪いのに立派そうだからOK」——SNSに流れてくる投稿や近所や知り合いの暮らし方を見ていると、ため息が出るほど変わっていない。

リサールの時代、上流社会のフィリピン人がすべきことは「スペイン語を話し、スペイン人のように振る舞うこと」だった。今はそれがアメリカ英語に変わっただけ。ひとつ違いがあるとすれば、当時は見下されていた中華系が、今やチノイとして確固たる地位を築いているくらいです。

リサールがもし今も生きていて、フィリピンをみたら、きっとがっかりすると思うよ。何も進展がないじゃないか、って。

——ライアンがぽつりと言いました。

日本語版は英語版ほどの刺さる描写はないというのが正直なところですが、物語としてするする読めるので、まずリサールの世界を知りたい人にはこの一冊が一番とっつきやすいと思います。


③ 自分とか、ないから。教養としての東洋哲学|しんめいP 著

自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学 Kindle版
しんめいP (著)
自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学 Kindle版
しんめいP (著)

友人に勧められて読んだ本です。

フィリピンに住んでいると、腹が立つことが本当に多い。賄賂が平然と行われていたり、ゴミの捨て方の基礎知識がなかったり、時間の概念が日本とまるで違ったり、シニアから受ける無茶な扱いだったり。あげたらキリがない。

郷に入れば郷に従え、とわかってはいる。でもストレスはかかる。

そんなときに読んだのがこの本でした。

著者は、東大卒業後、紆余曲折をへて、実家でひきこもりに。その時に読んだ本から「空」などの東洋哲学に目覚め、難しい言葉を使わずにわかりやすく説明してくれます。その新鮮な視点が読みやすくて、すっと入ってきました。

で、読みながらずっと思っていたのが——これ、ライアンじゃん、ということ。

うちの夫、無宗教者なんですが、話をしていると結構仏教っぽいことを言うんですよね。「空」の概念を、本で学んだわけでもなく、自然と体得しているんです。

フィリピンにはPikon Ay Talo(怒ったら負け)という言葉があります。

Pikon Ay Talo(ピコン・アイ・タロ)
怒った者の負け、という意味のタガログ語です。

この本で読んだことと、その言葉と、ライアンの日常の態度が、全部同じことを指していると気づいたとき、なんか腑に落ちるものがありました。

私はまだまだ修行中ですが。


④ 反応しない練習|草薙龍瞬 著

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」 Kindle版
反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」 Kindle版

「自分とかないから。」を読んで、もっと知りたくなって買った本です。

ブッダの教えを、日常のことばで整理した一冊。要は、人が苦しくなるのは、出来事そのものよりも、それに対して心がすぐ反応してしまうことが原因だ、という話です。

嫌だ、ムカつく、不安だ、あの人と比べて落ち込む——そういう感情を「悪いもの」として戦うんじゃなくて、まず「ただの心の動き」として見る練習をしなさい、と。悩みを必要以上に育てないための本、といえばわかりやすいかもしれません。

理屈はわかります。すごくわかる。

でも私は全然できない。

毎日何かに怒っています。フィリピンのSNS依存率の高さも、この本と繋がってるなと思いながら読んだりしているんですが、読んでいる本人が一番できていないという状況です。

ただ、隣を見ると——ライアンが普通にこれをやっている。

どんな相手も、くみちゃんと犬以外は、僕の気分に影響は与えられないんだよ。僕がそれを許さないからね。

「自分とかないから。」でも同じことを思ったんですが、私が本を読んで学ぼうとしていることを、この人は最初から自然にやっている。フィリピン人って何なんだろう、と少し尊敬しています。

ストレスで死ぬ前に習得したい一冊です。挑戦中。


ところで、同調圧力が強いのは日本だけじゃないんですよね。

フィリピンにはパキキサマという文化があります。集団の和を乱さない、周りに合わせる、空気を読む——形は違っても、やっていることは日本とかなり近い。「空気に従わなければ」というプレッシャーは、二つの国に根強くある。

 「協調・和を重んじる」というパキキサマというフィリピン社会についてはこちら

この本が言う「反応しない練習」は、そのどちらの同調圧力にも有効だと思っています。まだできていないけど。


⑤ 最高の戦略教科書 孫子|守屋淳 著

これだけ、私が自分で選んだ本じゃないんです。ライアンに勧められました。

最高の戦略教科書 孫子 (日本経済新聞出版) Kindle版
最高の戦略教科書 孫子 (日本経済新聞出版) Kindle版

彼がよく言う言葉があって。

相手を、相手から出る油で料理してやれ
「カードは絶対にすぐ相手の前に出すな」
「頭の悪い奴、自尊心の強い人物は、自分を辱めるのが一番得意だ」
「相手のせいで気分を害したら、君の負け」

最初聞いたとき、この人は何者なんだろうと思いました。

彼はコミュニケーションの達人で、迷惑をかけてくる人への対処も、傲慢な外国人の上司への接し方も、感情的にならずに冷静に「どう動くか」を考える。怒るより、観察する。
戦うより、距離をとって、言葉で一本背負をしてみせる。

そのライアンが「この人の本を読んだらいいよ」と言ったのが孫子でした。

読んでみると、確かに刺さった。競争に巻き込まれない方法、無駄な争いを避ける方法、感情を動かさずに状況を見る方法。これはフィリピンという混沌とした環境で生きていくうえで、かなり実用的な考え方です。

③④⑤を読み返してみると、自分がこの3冊に求めていたものが見えてきます。

孫子は外の戦いをコントロールする本。反応しない練習は内面の反応をコントロールする本。

そして二つに共通しているのが——「勝つな。負けるな。そもそも戦うな。」という発想です。

これを実践するのは、正直めちゃくちゃ難しい。でも、無駄な消耗を避けて、自分のペースで生きたいと思ったとき、この二冊はセットで読む価値があると思います。

ただ正直に言うと、本を読み終えた私より、読んでいないライアンのほうがずっと孫子的に生きています。

①②③④⑤と並べてみると、私がKindleで学ぼうとしていることを、ライアンはとっくに知っているという事実に気づいてしまいました。これはいったい何なのか、まだ答えが出ていません。


おわりに

5冊を並べてみて、改めて気づいたことがあります。

歴史の本を2冊、東洋哲学の本を3冊。われながら偏ったラインナップだなとは思うんですが、これが13年フィリピンで生きてきた私が「今、必要だった本」なんだと思います。

日本にいたら、たぶんどれも手に取るタイミングが違ったと思う。不死身の特攻兵は、マニラに住んでいなければあんなふうには読めなかった。反応しない練習は、日本にいたら「いい話だな」で終わっていたかもしれない。

ここで読むから、刺さる。それだけのことなんですが、それが海外在住の読書の面白さだと思っています。

Kindleは、私にとって本当に助かっているツールです。日本のAmazonのKindleストアにアクセスするにはVPNが必要なこともあるので、まだ使っていない方はぜひ。

私が使うのはNordVPN

今月の読書代を含めた生活費は、フィリピンでの月々の生活費の記事にまとめています。本って気づいたら結構な金額になってるんですよね。

また読んだら紹介します。

📚 フィリピンで日本のKindle本を読む方法まとめ

フィリピンからでも、日本のKindle本は読むことができます。

ただし、本によっては制限がかかることもあるので、目的に応じて方法を選ぶのがおすすめです。


🔹 フィリピンで使ってみた!Nord VPNとExpress VPNの徹底比較
https://pinashaponlife.com/vpn/japan-netflix-vpn-overseas/

🔹 すべての日本のKindle本を自由に読みたい方
https://pinashaponlife.com/recommended/overseas-kindle-japan/

🔹Kindle Unlimitedを海外からVPNなしで読もう
https://pinashaponlife.com/vpn/kindle-unlimited-vpn-nashi/

🔹NordVPNの購入・設定方法
https://pinashaponlife.com/vpn/nordvpn-setup-philippines/


「とりあえず読める本から試したい」なら上、
「完全に制限なく読みたい」なら下をチェックしてみてください。

Kumiko Sato
✍ Author
Kumiko Sato

フィリピン在住の日本人ブロガー。文化・食・日常生活をテーマに、日本とフィリピンのあいだにある歴史や文化のつながりを紹介しています。
フィリピン人の夫とカビテ州アマデオで暮らしながら、海外生活のリアルを記録しています。

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