玄関ドアをオーダーメイドしたら、壁まで壊すことになった話

玄関ドアをオーダーメイドしたら、壁まで壊すことになった話

「ドアを替えるだけなのに、壁が壊れる」——そんなこと、普通は想像しないですよね。 でもこれ、フィリピンの住宅事情では「あるある」らしいんです。知らなかった……。


目次

そもそも、なぜ玄関ドアをオーダーメイドしようと思ったか

わが家は2025年6月に完成したばかりです。当然、ドアも新品でした。マホガニー材の、なかなか立派なドア。

……だったのですが。

フィリピンの気候、なめてました。

乾季に乾いてひびが入り、雨季に湿気を吸って膨張する。これを繰り返すうちに、ドアの開閉がだんだんきつくなっていったんです。

マホガニー自体は良い木材なのですが、問題はきちんとCure(乾燥処理)されていなかったこと。十分に乾燥させていない木材を使うと、こうして後からひび割れや膨張が起きやすくなります。新築なのに、です。

DIYとはほぼ無縁の夫婦なので、家にノコギリなどありません。
困り果てた夫がとった行動——使わなくなった包丁でドアを削り始めました。

包丁でドアを削る男。なかなかシュールな光景です。

旦那・ライアンに関する記事はこちら⬇️

そんなやり方でしのいでいたある日、友人の結婚式にゴッドマザー&ゴッドファーザーとして招待されました。2日ほど家を空けなければなりません。いざ出発という朝のこと——

鍵が閉まらない。

ドア自体は閉まるんです。でも膨張しすぎて、鍵が噛み合ってくれない。何度試してもダメ。時間はどんどん迫ってくる。

結局、鍵をかけずに家を出ることになりました。

高価なものは置いていないとはいえ、落ち着かないったらない。マニラへ向かう車の中で、私たちは固く心に誓いました。

「帰ったら絶対にドアを新調する」と。

オーダーメイドって聞くとすごく高そうなイメージがありますが、調べてみると工事費込みで10万円以内に収まるケースもあります(もちろん仕様によって変わります)。今回わが家もそのくらいで収まりました。

CCTV(防犯カメラ)も大事な防犯アイテム:フィリピンでのCCTVと防犯の話


木材の宝庫・高原地方でお店探し

わたしたちが住むのは、フィリピンの高原地方。ここは木材が豊富で、道沿いにはドアや家具を手作りして売るお店がずらりと並んでいます。ナラ材やカマゴン材といった高級木材も自由に選べて(本当は自然保護のため伐採制限がある木種もあるのですが……)、日本人の感覚からするとびっくりするくらい安い。

今回お世話になることにしたのは、引っ越し途中に道沿いで見つけたお店「MRT DOOR DESIGN」。

ドアを作ってくれたお店はSilang,CaviteにあるMRT DOOR Design
住所:Purok tres Brgy. Lumil, Silang Cavite

現地に行ってみると——壁の代わりに見本のドアで外を遮っている、なんとも大らかなつくりのお店でした。フィリピンらしい。

オーダーメイドのドア専門店。MRT DOOR Designの外。どんなデザインか外から見える。アイキャッチーでした。

オーナーはロシェルさんという女性で、日本が大好き。妹さんの旦那さんが日本人で岐阜に住んでいるとのことで、話はすぐに盛り上がりました。

お店の中。ロシェルさんによると、シランで一番古いお店なのだとか。
お店の中。ロシェルさんによると、MRT DOORはシランで一番古いお店なのだとか。

事情を説明して、メインの玄関と勝手口、合わせて2枚を新調することに。今回選んだ木材はTanguile(タンギレ)。マホガニーよりも安定していて、フィリピンの気候でよく使われる木材です。前回の失敗を繰り返さないよう、きちんとCureされた材を使ってもらうことも確認しました。

かなり打ち解けてきたころ、ライアンとロシェルさんがこんな話を進めていました。

「……じゃあ、ハンバ(ドア枠)も換えましょうか」

「え、ドア枠って今のを使い回しできないの?」と私。

「うん、きちんと替えた方がしっかりしたドアになるって。せっかくだからそこもちゃんとしようよ」とライアン。

頭の中に浮かんだのは、がっつりセメントで張り付いた木の枠のイメージ。

……まあでも、木枠だけ外すわけだから、大したことにはならないか。

その時の私は、完全に甘く考えていたのでした。

ドアと木枠の値段。とりあえずダウンペイメントは50%。

木材:Tanguile(タンギレ)/キルン乾燥済み・仕上げあり

項目サイズ金額
メインドア90×210cm13,500ペソ
ドア枠(ハンバ)2×4インチ5,500ペソ
勝手口ドア70×210 または 80×210cm11,000ペソ
ドア枠(ハンバ)2×4インチ5,500ペソ
合計35,500ペソ
頭金50%17,750ペソ

右側のメモはドアの仕様詳細で、「3/4インチ厚(仕上がり89.5×210cm)」「8.5の框、枠サイズ95×214、白」などドア枠や厚みの細かいスペックが書かれています。

ダウンペイメントとして17,750ペソ(2枚分、50%)を支払い、「今日の4時ごろ、サイズを測りに伺います」というロシェルさんの言葉を受けてお店を後にしました。

ロシェルさんはフィリピンでは珍しいほどプロフェッショナルな女性でした。だからきっと大丈夫。そう思っていました。


「3週間で完成します」——そして追加料金の話

ドアの作成中

契約直後から、ドアの制作が始まりました。「3週間ほどで出来上がります」とのこと。

ここで一つ、大事なことを書いておきます。

最初に支払った17,750ペソ。これはドア2枚+木枠2個の制作費のみです。

含まれていないもの:
  • ドアノブの取り付け
  • ドアノブ用の穴あけ加工
  • 運送費
  • 取り付け工事費

……え、全部別? と思ったあなた、正しい反応です。

ただ、フィリピンの慣習としてはこれが普通らしいんです。家を建てるとき、ドアは建設業者が取り付けまでやってくれます。だから「ドアだけ後から替える」という状況が、そもそもあまり想定されていない。改めてロシェルさんに工事もお願いすることになりました。


施工当日——「壁、壊していきますね」

3週間後。穴あけ加工費として1,500ペソを追加で支払い、いよいよ施工当日を迎えました。

ロシェルさんと、職人のネルソンさんが原付バイクに乗ってやってきました。フィリピンらしい登場です。

ここで私がひそかに心配していたことがありました。

フィリピンでは「養生」という概念がほぼ存在しません。

木を削る、セメントをいじる——その粉塵や破片が、家中に容赦なく舞い散ることになるんです。

そこで事前にライアンを説得し、ブルーシートを2枚購入して準備万端で待ち構えていました。

「家のものをカバーした方がいいですね!」とロシェルさん。

「そうです!まず作業区画をブルーシートで囲いましょう!」と私。

……ライアンを含むフィリピン人3人が、顔を見合わせました。

「いやいや、まだ囲うのは早いですよ」

「てか、囲うのは家具だよ」

「作業スペースを囲ったら、ネルソンさんが大変でしょ」

なにいってんの、この人。 という顔でこちらを見ています。

結果、ブルーシートは家具にかかることになり、わが家の小さなロフト全体が作業現場と化しました。犬たちも普段と違う雰囲気に興奮して出たり入ったりを繰り返し、粉塵は容赦なく家じゅうに舞い降りたのでした。


ネルソンさんがまず手にしたのは、グラインダー

木枠のギリギリを切っていくのかな、と思っていたら——枠に対して5〜7センチほど、ざっくりと切れ目を入れていくではないですか。

あれ、そんなに切らないと木枠って取れないの……?

ドアの取り付け作業。破壊は創造のはじまり。ガンガンぶっ壊して行きます。
破壊は創造のはじまり。カジュアルに、壁をガンガンぶっ壊して行きます。

そう、フィリピンの家のドア枠はコンクリートの壁にがっちりセメントで埋め込まれているので、枠を取り出すには周りの壁ごと壊すしかないんです。でも、そこまで大胆にやんないと無理なんですか?——

次の瞬間、ノミを壁に打ち込み始めました。

ガンガン割れていく壁。まずは壁を壊して木枠を取り外します。
ガンガン割れていく壁。まずは壁を壊して木枠を取り外します。

さっきの切れ目? そんなもの関係ない、という勢いで、壁をどんどん破壊していきます。

床に崩れ落ちるセメントの塊。

縦横に走る、大胆なヒビ。

力技で木枠をもぎ取るたびに、ヒビはさらに広がっていく。

ドアを破る怪しいおじさんにみえますが、取り付けをしてくれているネルソンさんです。
怪しいおじさんにみえますが、取り付けをしてくれているネルソンさんです。

去年の夏に建てたばかりの新築の玄関が、まるで爆弾でも落とされたような廃墟に変わっていきました。

爆弾が落とされたようなエントランス。去年建てたばかりのお家とは思えない状態に。
爆撃された住宅写真のよう。去年建てたばかりのお家とは思えない状態に。

さすがに顔面蒼白になった私がライアンの顔を見ると——

「ドアを変えようって言ったの、くみちゃんだよ?w」

アルミドアにしなかった件については、もう何も言えませんでした。

作業中のエントランスで。ライアンが嬉しそう。
嬉しそうなのはなんで??

破壊が8割ほど進んだところで、お昼の時間になりました。

ネルソンさんが「昼休みに行ってきます」と外に出ていきました。

そして——

3時間半、戻ってきませんでした。

連絡もなし。音信不通。

これ、実はフィリピンの作業現場ではよくあることです。

  • スマホを持たない作業員
  • 昼休みに時間通りに帰ってこない
  • 犬や猫を連れてくるが、仕事が終わったらそこに放置していく

わかってはいたんです。わかってはいたんですが——玄関が半壊した状態での音信不通は、流石に軽いパニックになります。

先に自分のお店に戻っていたロシェルさんに電話して、ネルソンさんの奥さんに連絡を取ってもらいました。でも結局できることは何もなく、フェイスマスクを上下させながら、ただただ彼が現れるのを待つだけでした。


ネルソンさんが戻ってきた後、破壊活動は再開。そして夕方、ようやく木枠(ハンバ)だけが取り付けられた状態で、彼は帰っていきました。

とりあえずドア枠がつけられました。不安そうな犬。
とりあえずドア枠がつけられました。なぜ家が壊されているのか理解できず、不安そうな犬。

セメントは「乾かす時間が必要」とのことで、あえてざっくりとした状態のまま。

壁と木枠の隙間から、夕陽が見えました。

瓦礫の向こうから夕陽が見えました。

新築の玄関から、沈む夕陽。なかなかロマンチックですが、ドアがありません。

さて。今夜、どうやって寝ればいいのでしょう?

ドア修理、1日目の夜。犬たちがとにかく不安そう…

ここでようやく、出番のなかったブルーシートが役に立つ時が来ました。ドアのない開口部を、黄色いガムテープでぴっちり塞ぎます。

青いシートに黄色いテープ。

右に見える青い棚は本物のIKEAです。

なんだか無駄にIKEAみたいな配色になりました。

こうして、1日目は終了したのでした。


2日目——ネルソン、また来ない

朝9時に来るはずのネルソンさんが、11時30分を過ぎても現れません。

だんだん怒りがおさまらなくなってきた私は、ロシェルさんにメッセージを送りました。

ロシェルさんにメッセージ「いつ出没するかわからない幽霊でも待ってる気分だ」とメッセージをする私。
ロシェルさんにメッセージ「いつ出没するかわからない幽霊でも待ってる気分だ」とメッセージをする私。

「こんな状態だったら、工事費は全額出せません!」

ロシェルさんはかつて中華系の企業で真面目に働いていた、優秀なプロフェッショナルです。東アジア人(=私)の怒りをしっかり受け止めてくれた彼女は、ネルソンさんを監視するために、わざわざまた家に来てくれました。

結局昼過ぎになって、遅れてやってきたネルソンさんの言い訳は——

「家からここへ向かう途中、交通事故に遭った人を見つけて、助けに行っていた。水を配達していたバイクの人が亡くなって、病院まで付き添っていた」

……詳細で、具体的で、感動的なエピソード。

信じていたのは、ライアンだけでした。

この日はなんとかドアの取り付けが進み、勝手口のドア枠とドアも設置。セメントも8割近く入りました。

ところが——ここでまた一つ発覚します。

セメントの表面を均して、ペイントで仕上げる工程。これが、最初に言っていた「工事費」に含まれていなかったのです!!

追加料金を払って、仕上げまでお願いすることにしました。


3日目——フィリピンのWABISABI

3日目。ネルソンさんは9時きっかりに到着しました。

下地材のマシリアを塗り——ネットで調べると「24〜48時間乾燥させること」とあったのですが——誰もそれを気にする様子はなく、そのままペンキを上から塗り始めました。

完成したのは午後5時ごろ。

仕上がりを見て、私は言いました。

「……なんか、手作りケーキみたいじゃない?表面

ぼこぼことした、独特のテクスチャー。

するとライアンが、嬉しそうに答えました。

「フィリピンのWABISABIだよw」


でも——ドアは、美しかった。

仕上がったドア。もう芸術品です。
仕上がったドア。もう芸術品です。

デザインも重厚で、開閉のたびにずっしりとした感触が伝わってきます。ドアのクオリティは、文句なしの天下一品。枠の厚みも増して、玄関全体に貫禄が出ました。

想像をはるかに超えた工事になってしまいましたが、毎日使うドアがアップグレードして、安く建てた家が重厚感を増したように見えます。

(ドア周辺の壁は、手作り感まんさいになったけど)

風水的にも、きっといい運を運んできてくれるはず!

後悔はしていません。やってよかったです。

ただ——バルコニーのドアには手をつけなくて、本当に良かったとも思いました。

もし次にドアの交換が必要になったとしても、ハンバ(枠)は絶対にそのままにする。

心に固く誓ったのでした。

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新しいドアを手に入れたあとは、スコールから守るためにキャノピーも設置しました。
勝手口にキャノピーを作ってもらった話はこちら


費用の総まとめ

最終的にかかった費用はこちらです。

項目費用
ドア+枠(2セット)17,750ペソ × 2 = 35,500ペソ
ドアノブ穴あけ&取り付け1,500ペソ
施工費(Labor)7,500ペソ
材料費(ペンキ・マシリア・セメント)3,450ペソ
配送費(Lalamove)1,577ペソ
合計49,527ペソ

日本円にすると(1ペソ≒2.5円換算で)約12万円ほど

オーダーメイドのドア2枚+工事込みでこの価格は、日本ではまず考えられません。フィリピン、というか高原地方の木材文化のおかげです。

ちなみにセメントはかなり余りました。余ったセメントの使い道は……特にありません。
でもいつか使うかもだから、大事に取っておきたいです。


気をつけるべきこと(やってみてわかったこと)

1. 枠(ハンバ)の交換は、壁ごと壊すことになる

フィリピンの玄関ドア枠はコンクリートにがっちり埋め込まれています。「枠も替えましょう」という提案は、壁の大規模な解体を意味します。よほどの理由がない限り、枠はそのまま使い回すことを強くおすすめします。

2. 料金に「何が含まれているか」を最初に細かく確認する

ドア制作費・穴あけ・運搬・取り付け・仕上げ・ペイント——これらは全部別々に請求されることがあります。見積もりの段階で「全工程込みでいくら?」と確認しましょう。

3. 養生は自分でやる気持ちで

フィリピンの職人さんに養生の文化は(ほぼ)ありません。粉塵や破片から家を守りたいなら、自分でブルーシートや養生テープを用意して覚悟を決めましょう。

4. 職人さんの時間感覚はゆるやかです

昼休みが3時間半になることも、翌日来なくなることもあります。信頼できるオーナー(ロシェルさんのような人)を間に立てておくと、いざというとき動いてもらえます。

あるいは、お昼休みを外でとらせない。
1−2日のような短期プロジェクトだったら、そうセットアップするの手かもしれません。

5. 乾燥時間などの「正しい手順」は期待しない

下地材は24〜48時間乾かしてからペイントするのが本来の手順ですが、そうはならないことが多いです。仕上がりに完璧を求めると、心が折れます。


まとめ:これは「失敗談」じゃなく「こういうものだ」という話

壁が壊れることも、音信不通の職人さんも、追加料金も、ぼこぼこの仕上がりも——フィリピンでのリフォームでは「こういうもの」です。知っていれば驚かないし、笑い飛ばせます。

オーダーメイドのドアそのものは、本当に素晴らしかった。それだけは声を大にして言えます。

フィリピンで家のリフォームを考えている方、ぜひ心の準備と、ブルーシートと、ロシェルさんのようなプロを見つけることから始めてみてください。

そして——枠(ハンバ)は、できる限りそのままにしておきましょう(笑)。


おまけ:なぜ熱帯フィリピンで木製ドアが使われるのか

「暑くて湿気が多いのに、なんで木のドアなの?」と思った方へ、少しだけ。

理由は気候への適性というより、慣習・加工のしやすさ・住宅らしい見た目の3つが大きいです。フィリピンでは昔から木材文化が根強く、現場で削って調整できる木は「現場合わせ」が多いフィリピンの建築スタイルとも相性がいい。

問題は、Cure(乾燥処理)が甘い木材を使うと、湿気で膨張・ひび割れが起きやすいこと。今回のわが家のマホガニードアも、まさにそれが原因でした。

詳しくはこちらの記事をご覧ください⬇️

木製ドアを選ぶなら、きちんとCureされた木材かどうかを必ず確認しましょう。

英語記事はこちら:https://pinashaponlife.com/en/philippines-custom-door-replacement/

Kumiko Sato
✍ Author
Kumiko Sato

フィリピン在住の日本人ブロガー。文化・食・日常生活をテーマに、日本とフィリピンのあいだにある歴史や文化のつながりを紹介しています。
フィリピン人の夫とカビテ州アマデオで暮らしながら、海外生活のリアルを記録しています。

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