2025年6月の末、雨季まっさかりのアマデオで、うちのビレッジのバナナの木の根元に、見たこともないほど大きなキノコが顔を出していました。

最初は「大きなキノコだな」と思っただけで、食べようとは全く考えませんでした。ところが旦那がひとこと。「バナナの木の横に生えるキノコは食べるものだって、昔大人がよく言ってたよ」。
カブティン・サギンという名前:日本名「ヒラタケ」
旦那の記憶をたよりに調べてみると、すぐに名前がわかりました。カブティン・サギン(Kabuting Saging)。タガログ語でサギンはバナナのこと。直訳すると「バナナのキノコ」という意味になります。英語名はオイスターマッシュルーム、日本語ではヒラタケにあたります。

フィリピンの農村部では、収穫後のバナナの茎や葉を積み上げておくと、そこから自然にこのキノコが生えてくるため、昔から生活に密着した食材として親しまれてきました。バナナの茎(擬茎)は水分と繊維が豊富で、キノコの菌糸が繁殖するのに最適な環境なのだそうです。フィリピンの温かく湿った気候も手伝って、驚くほどのスピードで成長します。
ちなみに、日本でよく見るグレーのヒラタケとは厳密には少し種類が異なり、熱帯に適応した白オイスターマッシュルームの仲間であることが多いようです。野生のものは特に香りが強く、鶏肉のような弾力があるのが特徴とも言われています。
雨季になると、こうして野生のものが自然に生えてくることがあります。
「じゃあ食べてみようよ」と乗り気になる旦那に対し、さすがに私は慎重になりました。見た目がそれらしいからといって、素人判断で野生のキノコを口にするのは怖い。プロに診断してもらおうと思い、近所で頼れる場所を探しました。
市役所に持ち込んでみた
調べると、候補は二か所見つかりました。キノコ農家のプロがいるカブティハン・ファームと、Municipal Agriculture Office(市農業事務所)Amadeoです。
今回は市農業事務所に、採れたてのキノコをそのまま大きな袋に入れて持ち込んでみました。
事務所の中では、スタッフの方々がそれぞれ忙しそうに仕事をこなしていました。少し緊張しながら袋を取り出すと、お姉様方がわらわらと寄ってきました。そしてキノコをちらと見るなり、

「あ、これはカブティン・サギンだよ。スープにして食べな」
あっさりしています。拍子抜けするくらいあっさりしています。
さらに口々に続きます。
「こんなでかいの、なかなか採れないよ」
「怖がって誰も食べないだろうから、あんたたちみんな食べちゃいなさい。安全なやつだから」。
な、なんて雑な鑑定…!!
完璧な対応を求めてこの国に来たわけではありません。
お姉様方の自信と笑顔を信じることにして、腹を括りました。その日の夕食にすることにしました。
近所の人たちの反応
大きな袋を抱えてビレッジを歩いていると、目立ったらしく、近所の人に声をかけられました。事情を説明すると、
「うええええー。私たちは怖いんで食べないからあんたたちどうぞ。でも食中毒には気をつけてね」
と、後退りしながら答えてくれました。食べる気はゼロだけれど、
口だけの心配はしてくれる。フィリピンの田舎らしい、温かい距離感です。
食べてみた
調理はシンプルに、スープにしました(市農業事務所のお姉様方の言いつけどおりです)。
食感は、肉厚でぷりぷり。茎までやわらかく、すべて食べられます。椎茸のように主張する強い風味はなく、だしのきいたスープに自然になじみました。量が多かったので、家族でたっぷり食べられました。
採れたてのヒラタケをシンプルに味わう、やさしい味のスープ。
材料
- 2 cups ヒラタケ(カブティン・サギン)
- 4 pieces にんにく
- 1.4 ounces しょうが(多めが美味しい)
- 1 pieces 玉ねぎ
- 2.9 cups 水
- 1 teaspoons 味覇(または魚醤・塩)
STEPS
にんにくはつぶし、1.4 ounces しょうが(多めが美味しい)は薄切り、1 pieces 玉ねぎはくし形に切ります。油を熱した鍋で、にんにく→しょうが→玉ねぎの順に中火で炒めます。玉ねぎが透き通ってきたらOKです。
鍋に2.9 cups 水を注ぎ、中火で3〜4分煮ます。しょうがの香りがしっかり出てきます。
2 cups ヒラタケ(カブティン・サギン)を手でほぐして加えます。キノコに火が通るまで2〜3分煮ます。茎までやわらかく、すべて食べられます。
teaspoons 味覇(または魚醤・塩)を加えて味を見ます。本来のティノラは魚醤(パティス)や塩だけのシンプルな味つけ。薄めに仕上げるほどフィリピンらしいさっぱり感が出ます。
NOTES
カブティン・サギンは茎まで全部やわらかく、捨てるところがありません。椎茸のような強い香りがないので、シンプルなスープでもキノコ本来の旨みがしっかり感じられます。
もちろん、何も起きませんでした。おいしかったです。
これはオリジナルのティノラではなく、カブティン・サギンで試した自己流アレンジです。本場のティノラは鶏肉・青パパイヤ・モリンガの葉(マルンガイ)が入ります。手に入ればモリンガの葉を加えるとぐっとフィリピンらしい味になります。
食べられないままにしておくのは、もったいない
フィリピンの地方では、野生のカブティン・サギンを食べる文化が昔からあります。でも今は、知識が失われているのか、あるいは単純に怖いのか、目の前にあっても手をつけない人が多いようです。近所の人たちもそうでした。
疑問に思ったら、専門家に聞けばいいと思います。市農業事務所はそのためにあります。意外とあっさり、答えをくれます。
雨季にバナナの木の根元を見かけたら、ちょっと立ち止まってみてください。何か生えているかもしれません。

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