フィリピンの婚前セミナー体験談|市役所に連れて行かれた話のリアル

フィリピンの婚前セミナー体験談|市役所に連れて行かれた話のリアル
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ライアンとお父さんに「ちょっと行くよ」と言われて連れて行かれたのが、市役所でした。

2013年のこと。場所はマニラのケソンシティホール。
当時結婚願望がなかった私。日本から出てきて、付き合ったばっかりでなんで結婚だよバーロー!
無理やり連れて来させられたのがもう嫌で嫌でしょうがない。私の不快指数はもう限界突破していました。

フィリピンで結婚するには、婚前セミナーを受けなければなりません。マリッジライセンス(婚姻許可証)の取得に必要な、政府が義務付けたセミナーです。受けていないと、そもそも申請が受理されない。

この記事では、私自身が2013年に受けた体験と、最近受けたばかりの友人の話を合わせてまとめています。自治体によって、教会によって、時代によって、内容はかなり違います。でも「4時間」という長さだけは、どうやら変わらないようです。

目次

フィリピンの婚前セミナーとは

そうですね。説明文と表を組み合わせるのが一番読みやすいと思います。こんな感じです。


フィリピンで結婚するには、まずマリッジライセンス(婚姻許可証)が必要です。新郎か新婦のどちらかが居住する市区町村の役所で申請し、申請に必要な書類のひとつが婚前セミナーの修了証明書です。ローカル同士の結婚でも同様に義務付けられています。

項目内容
開催場所市区町村役所または教会(自治体によって異なる)
内容家族計画・コミュニケーション・家計・宗教など
費用無料〜数百ペソ(自治体によって異なる)
時間4時間前後
修了証の有効期限自治体によって異なる(要確認)
マリッジライセンスの有効期限発行から120日間

マリッジライセンスは120日以内に挙式を行わなければ失効し、申請し直す必要があります。

私はこの120日を見事に過ぎました。結婚を渋ったからです。


私が受けた頃の話——2013年、ケソンシティホール

当時のQCシティホールは、とにかく混んでいました。

ライアンと、義父と3人で向かいました。父ジョセフが自主的についてきたのは、「シニアを連れていくと色々と手続きが有利になるから」という理由でしたが、特に役にはたちませんでした(パパごめん)。

父ジョセフは、こういうイベント自体が好きというのもあったと思います。
彼はセミナーが終わるまで、ずっと外で誰彼構わず喋り続けていたのです。

生きる伝説・義父ジョセフに関してはまた書きたいと思います。

市職員に賄賂をせがまれる

カウンターで待っていると、全部の指にデカい金色の指輪をはめた血流の悪いおっさんが登場。
私たちを奥に呼び出しました。それで義父に向かって、

セミナーを免除させてやることもできるって、この韓国人女につたえろ。2000ペソでいい。

機嫌がすこぶる悪かった私はもう怒りがおさまりません。

か、韓国人って私のことか…!!
外国人だとおもって足元見やがって…バッキャロー!

…と叫ぶ前に、義父とライアンに宥められました。お金が惜しいので、セミナーに出ることにしました。

会場は日本の教室みたいな場所だった

場所は学校のクラスルームのような部屋でした。
黒板があって、2人がけの机が4列縦に並んでいる。そこに我々カップルたちが座るように指示されます。

先生のような女性の市職員が進行役で、まず一組ずつ立たされました。

「どうして結婚を決意したのか。どうしてこのパートナーを選んだのか。子どもは何人欲しいか。」

理由を、全員の前で発表するところから始まります。

うちの番になり、ライアンが「彼女は日本人で、英語教室の生徒で…」と一通り説明すると、やっぱり周りが珍しそうにしていました。外国人はやっぱり目立ちます。

しかし、それを上回る、忘れられない発表がありました。参加者の中に、若い女性と、少し年配の男性がいたんです。
カップルが立ち上がり、男性がこう言ったんです。

僕はなかなか結婚できなくて、周りから色々と疑われ始めたのがつらかった。
だから慌てて選んだのが彼女でした

明らかにここにいるみなさんとは世代が違うし、みなさんも不思議に思ってたでしょうが、理由は、まあ、そういうことです。子どもはわかりません。神様次第です。

…と一息にしゃべって、着席した男性。2−3秒遅れて静かに座る女性。
部屋が静まり返りました。
それでいいのか、彼女!!慌てて選ばれたけど、君はそれでいいのか!!

ファミリープランニング:子作りは計画的に

その後はファミリープランニングの話。
へー。聖書の「産めよ、増えよ、地に満ちよ」、ってわけでもないのか。とちょっと意外に感じました。
しかし、それは私の想像の斜め上をいくものだったんです。

安全日を数珠で数える

登場したのは、黒い球1個、赤玉と白球、あと茶色のビーズがついた長い数珠のようなもの。

サイクルビーズの図
サイクルビーズの図(AI生成した画像です)

今日が生理1日目だとすると、そこから日数を数えるわけ。黒い球から右側へ、いーち、にー、さーん……

一粒ずつ数えながら説明が続きます。
これはサイクルビーズと呼ばれる自然家族計画法のツールで、
カトリックの教えに沿った避妊方法として使われているものです。

でもそんなことは全く知らなかったわたしはもう絶句!

基礎体温で調べなくていいの!?ビーズで安全日しらべるってすごすぎなんだけど

すると黙って座っているのが苦手なライアン(英語教師)は、疲れ切った顔でこう言いました。

だからこの国、子どもで溢れてるじゃん…。もう黙って聞いてよう…

現実的なコンドームも紹介してました

避妊具の紹介もありましたが、コンドームは出てきたものの使い方の実演はなかったです。
その頃は確か、今と違ってコンドーム自体が手に入りにくかったんです。日本製みたいにクオリティも高くない。2013年のフィリピンではコンドーム使用率はかなり低かった*。

第一グッズを使った避妊自体がカトリックでは元々推奨されてないことでもありますし。

カトリックと避妊の関係

カトリック教会の公式教えでは、人工的な避妊は原則として認められていません。教理問答でも「避妊」は退けられる行為として扱われ、教皇パウロ6世の回勅 Humanae Vitae でも、受胎を直接妨げる手段は「常に不法」てされてる。


自然な周期に基づく家族計画(いわゆる自然避妊・禁欲を含む方法)までは一律に否定していないんですって。

だからコンドームを紹介したのは、結構攻めていたんだなーと思います。

私はこのあたりで本を取り出しました。持参していたんです。
ところが、学生時代に授業中に漫画を取り上げられた記憶がよみがえったのか、真面目な日本人気質が働いたのか
——結局一度も開けませんでした。

タガログ語オンリーの講義が続く。部屋は暑い。本も読めない。
ライアンも魂が抜けた顔して座ってました。

拷問でした。

*2013年度のフィリピンにおけるコンドーム使用率

フィリピンの公的調査(2013年NDHS)でも、避妊におけるコンドームの利用は非常に低いことがわかっています。
また別の分析では、継続的にコンドームを使用している人は約1%程度にとどまるという結果も報告されています。
参考:Determinants of consistent condom use among Filipino women: Results from the 2017 Philippine National Demographic and Health Survey


友人が最近受けた婚前セミナー話——令和・教会ver

10年以上経った今、同じセミナーはどう変わっているのか。最近受けたばかりの新婚ほやほやの友人に話を聞きました。

場所は教会。市役所とは別に、教会主催のセミナーが月1回のスケジュールで開催されていて、そちらに参加したそうです。
参加費は無料。カップル20組が集まり、フィリピン語と英語まじりで4時間。
私の時代と、時間だけはまったく変わっていませんでした。

「じゃあみんなでキスをしてください」

最初に驚いたのが、開始早々のひと言でした。

「では、カップル全員で同時にキスをしてください」

ざわっとした空気があったのか、それともみんな素直に従ったのか
——友人いわく「まあ、そういう雰囲気だった」とのこと。「悪かぁなかったよ」。

内容はファミリープランニング、コミュニケーション、家計、宗教と幅広く、その中で印象に残ったのが夫婦の役割についての講義だったそうです。

「結婚したら、妻は夫に従うべきです」

聖書の教えに基づいた話として伝えられましたが、現代的な価値観を持つ女性たちには少し居心地が悪かったかもしれない、と友人は振り返ります。

ファミリープランニングについては、スマホアプリの話は一切なかったそうです。10年たった今も、かなりクラシックなままだったみたい。


さらに、ある場面で場の空気が変わりました。

赤ちゃんを連れてきた夫婦が、子どもに赤と黒のビーズのブレスレットをつけていたんです。

アンティン・アンティン(Anting-anting)は、フィリピンの伝統的なお守り(アギマット)です。
金属や石、動物の骨、紙の護符などさまざまな形があり、魔除けや幸運、時には超自然的な力をもたらすと信じられています。

フィリピンでは魔除けや健康祈願としてよく見られるお守りですが、教会のファシリテーターにその場で指摘されました。

アンティン・アンティン(お守り)を信じることは、神の教えにそぐわない

宗教的な場でのセミナーならではの場面でした。


個人的な質問も飛び出します。どこで出会ったか、子どもは何人欲しいか——これが全員の前で一組ずつ聞かれたそう。
…これは私たちと一緒かな。

友人の正直な感想はこうでした。

形式的なものだと思って行ったけど、意外と学びがあった。
結婚は真剣なことだから、真剣に受けた方がいいと思う

まじか。やっぱりとことん真面目な友人でした。

自身の結婚式出席者の分類を、円グラフでプレゼンをしたただけあります。
漫画本を持って行った私とは大違いです…。


まとめ:「結婚は甘くない」と教育する場

私の場合、正直に言うとセミナーの内容よりもやっぱり「連れてこられた」という事実の方が頭にありました。自分の意思とは別のところで物事が動いている感覚。形式的で、どこまで幸せな結婚に貢献するのは疑問です。

ただ、あえて面倒臭いセミナーを受けさせることで、安易な結婚を抑制させたい目的があるのだろうとは思います。
ローカル同士の結婚だとフィリピンでは離婚はできませんから、その対策目的で作られたものなのでしょう。

でも今思えば、あの部屋にいた人たちのことはよく覚えています。

「慌てて仕方なく選んだのが彼女でした」と言った男性のこと。
数珠を一粒ずつ数えながら説明していた市職員の女性のこと。
コンドームの使い方を実演してみせろ、と彼女をからかっていた若い参加者たち。
セミナーの間、外で市職員と立ち話をし続けていた奇跡の人、義父・ジョセフ。

セミナーの「内容」より、そこにいた「人たち」が記憶に残っています。

友人の感想は少し違いました。
10年以上経って、セミナーの質が上がったのかもしれないし、教会という場所の雰囲気がよかったのか。

ひとつ言えるのは、フィリピンにとって結婚は軽いものではない、ということ。
離婚が法律で認められていない国が、わざわざセミナーを義務付けている理由は、そこにあるんだと思います。
その重さは、あの暑くて長い4時間の中に、ちゃんと込められていたのかもしれないし、そうでもないのかもしれない。

これは外人、ローカル関係なしで義務つけられています。
「結婚は甘くない」という行政からの熱いメッセージをこころしてご参加ください。結構ハードです。

👉 フィリピン人の恋愛観や結婚観についてはこちら→フィリピン人の恋愛観|付き合うとこうなるリアル
👉 私たちの結婚までの話はこちら→marriage story

Kumiko Sato
✍ Author
Kumiko Sato

フィリピン在住の日本人ブロガー。文化・食・日常生活をテーマに、日本とフィリピンのあいだにある歴史や文化のつながりを紹介しています。
フィリピン人の夫とカビテ州アマデオで暮らしながら、海外生活のリアルを記録しています。

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