多国籍の職場で働いていたとき、同僚(今は友達)のイスラエル人がこう言ったんです。
“Noted(わかりました)”って返信してくるやつ、マジでムカつく
毎度”For example(例えば)”って前置きしてから話す奴は頭悪く見える、というか実際に頭が悪いやつが言う
フィリピンと日本のミックスである同僚の口癖でもあり「For example」と話し出すのを遮るように
それやめろよ。お前が頭悪いのはもうわかりきってるんだから。アナウンス毎回すんなよ
…そうか。じゃあ私も控えようかな、と凍りついたオフィスの中で思ったものでした。
でもその話を夫のライアン(フィリピンでTESOLを取得した英語教師)にしたら、
For exampleが頭悪く聞こえる?そんな話、聞いたことないよ
とあっさり否定されました。
同じ英語なのに、人によって受け取り方がこんなに違う。「避けるべき英語表現」って、本当にあるんでしょうか。
本当に気をつけた方がいい2つのポイント
まずこれは本物の地雷です。
気をつけた方がいいその1:全部大文字で書く
ALL CAPS(全部大文字)で文章を書くのは、英語圏では「怒鳴っている」と受け取られます。“PLEASE SEND THE FILE”と書いたら、相手は「なんでキレてるんだ?」「喧嘩売ってんのか」と思う。強調したいときは太字か、せいぜい一単語だけ大文字に。文全体をCAPSにするのは避けた方がいいです。
気をつけた方がいいその2:「??」と何個もクエスチョンマークを入れる
???と疑問符を連続させるのも同じ。”Did you get my email???”は「詰め寄っている」「イライラしている」印象を与えます。?は一個で十分。…これ日本人の人普通にやる人多いと思うのは私だけ?
これは文化差というより、英語圏全体で「そう受け取られる」という共通認識があるので、覚えておいて損はないです。
ちょっと変だけど地雷じゃない:”Kindly”と”Noted”
“Kindly”——特にフィリピン人のビジネスメールでよく見かける表現です。”Kindly send me the report.” “Kindly be informed that…”みたいな使い方。
ライアンに聞いてみたら「文法的に間違いじゃないけど、古くてよそよそしい響きがある。フィリピン人がPlease代わりに使うのは独特だよね」とのこと。地雷ではないけど、ネイティブには少し浮いて聞こえることがある、という感じ。フィリピンに住んでいる外国人たちも影響されて使うKindlyですが、私は使っていません。ちょっとした違和感を感じるからです。
“Noted”だけで返信するのは、多国籍の職場で働いていたイスラエル人の同僚が「これを送られるとムカつく」と言っていたのを覚えています。確かに、日本語で言えば「了解」一文字みたいな冷たさがある。”Noted, thank you!”と付け加えるだけで全然印象が変わります。
私は他の表現の方が好きなので、個人的には使いません。ただこれも、その人の個性や文化背景による部分が大きい。「Notedだけで何が悪い」という人も普通にいます。
普通なのに悪者にされがち:”Hi,”と”Thanks”と”Please”
ネットでよく見る「これは失礼」論争の中で、私が「いや、普通じゃないの?」と思うものがいくつかあります。
“Hi,”だけのメール書き出し。日本人の同僚が「失礼だ」と怒っているのを見たことがあるんですが、現代のビジネス英語では”Hi [名前],”は完全に標準です。むしろ”Dear Mr. ○○,”の方が堅苦しくて距離を感じることも。相手の年齢や関係性によって使い分ければ十分。
“Thanks, Kumi”という締め方。「Thanksは嫌味に聞こえる」という話をネットで見かけますが、これも文脈次第。怒りのトーンが続いた後の”Thanks.”は確かに皮肉っぽく聞こえるけど、普通のメールの締めとしての”Thanks,”は何の問題もないです。ライアンも「普通だよ」と言っています。
“Please〜”が子供っぽい問題。”Please send me the file.”が命令口調に聞こえるという話もあって、確かに”Could you send me the file?”の方が柔らかい場面はある。でも”Please”自体が悪いわけじゃない。私は結構Pleaseを使います。
そもそも、ネイティブはメールのどこを見て「この人は英語話者じゃないな」と判断しているのか、ライアンに聞いてみたんです。
書き方が不自然だったり、変だったり、違和感があるとき。それがあると、英語がネイティブじゃないのかなと思う
つまり特定の表現がどうこうより、全体として自然かどうかが判断基準なんですよね。”Hi,”だけが失礼とか”Thanks”が嫌味とか、そういう細かい話じゃない。
別にネイティブじゃなくてだから何?というのが私とライアンの感想でもあります。
だって私たちネイティブじゃないし。そのふりをしたところで一体…。というのが正直なところ。
「For exampleが頭悪く聞こえる」問題
冒頭で書いたイスラエル人の同僚の話、ライアンに伝えたときの反応がおもしろくて。
「そんな話、聞いたことないよ。For exampleは普通に使う表現だよ」
その人固有の感覚なのか、イスラエル式ビジネス英語の感覚なのか、確かめようがないんですが——これが「英語に絶対的な正解はない」という話の核心だと思うんです。同じ表現でも、受け取る人によってこれだけ違う。
ライアンが言う「避けるべき表現リスト」への違和感
今回のインタビューで一番印象に残ったのが、「避けるべき表現をピンポイントで挙げるのは難しい」というライアンの言葉でした。よくソーシャルメディアでも扱われるトピックでつい気にしてしまうことではありますよね。
会話というのは動的なもの。状況によって大きく変わる。本当に大事なのは、実際の英語会話を観察して、生きた英語を体験すること。
これ、「正しく言えないなら話さない」問題と完全に繋がっています。「避けるべき表現リスト」を増やすほど、「間違えてはいけない」という意識が強くなって、結局また口が閉じてしまう。
日付の表現の違いひとつとっても、「普通」は文化によって変わるんです。これ、私自身が痛い目を見た話があって。
私がイラついたフィリピン英語:数字と日にち
フィリピン人は序数を圧倒的に使わない
コロナ禍、自宅でリモートワークをしていた時のこと。画面をシェアしながらフィリピン人の同僚2人とミーティングをしていて、エクセルの数字を指しながら「これ、20だよね」と確認したんです。
するとフィリピン人同僚Aが「19」と言う。え?と思ってBにも聞いたら「そうだよ、19だよ」と。
そうか、じゃあ19で、とファイルを提出したら大間違い。しかもお金が絡む話だったので大変なことに。慌てて同僚たちに伝えたら——
「僕ら、19って日付のことを言ってたんだけど」
アメリカ式なら”the 19th”と序数詞をつけるところを、フィリピン式では”19″とそのまま言うことが多い。数字の話をしていると思っていた私と、日付の話をしていた彼らで、完全にすれ違っていたわけです。
思わず「それはコンテクストが繋がらないよ。日付を言うときは序数つけてくれないとややこしい!」と怒ってしまいました。
ただ、フィリピン人は怒られたり訂正されたりするのをとても嫌がります。親しい仲間同士なら際どいジョークも飛び交うけど、普通の同僚レベルでは話が違う。「ごめんなさい」とはあまり言われず、その後しばらく気まずくなってしまいました。
正しい・間違いの話じゃなくて、文化的な「普通」のズレが引き起こしたすれ違い。英語は共通言語のはずなのに、それだけじゃ足りないんだということを痛感した出来事でした。
ライアンも「フィリピン人とアメリカ人のビジネス英語は大きく違わない。でも、アイデアの伝え方のトーンやスタイルは、文化や個人の背景によって変わってくる」と言っていて。言葉は同じでも、その裏にある文化の文脈まで一致しているとは限らない。
結局、英語に絶対的な正解はない
まとめると、本当に気をつけた方がいいのはALL CAPSと???ぐらい。あとは文脈・相手・文化背景によって変わる話ばかりです。
「その表現は失礼」「これを使うとネイティブに嫌われる」という情報は、誰かの体験や感覚であって、英語全体のルールじゃない。イスラエル人がNotedにムカつくのと、ライアンがFor exampleを普通だと思うのは、どちらも正しい。
友人とこの話をしていたんですが、「結構みんな間違った英語使ってませんか?」という話になって。アメリカ本土の人でも崩れた英語を使う人は多いし、大概の人は英語が第二言語。多少間違った英語を使っても、命取りにはならない——というか、そもそも「正しい英語」の定義自体があやふやなんですよね。
それよりも、そういう意地の悪いことをいわれても、「正しくない英語」しか話せなくても、怯むことなく自分の意見を言えることの方がずっと大事だと思う。
面白いのは、フィリピン人同士での英語へのこだわりが強いこと。特にコールセンターで働いている人たちの間では、文法の間違いを指摘し合うケースが多い気がします。綺麗な英語を使えることが「学がある」「ステータスが上」と判断される、という現実があるからだと思う。英語が社会的な階層と結びついているんですよね。
ただ、外国人には優しいですよ、フィリピン人は。私たちが多少おかしな英語を使っても、上から目線で接してくる人は稀。……ライアンの妹ぐらいかな(笑)。
でも私個人としては、あまり気にしすぎないことかなあと思っています。それより大事なのは、堂々としていること。たどたどしくても、間違っていても、自信を持って話している人の方が、ちゃんと伝わる。ライアンが言うように、リストを覚えるより実際の英語会話を観察して、使ってみる方がずっと大事。
👉 フィリピン英語の正体——フィリピン人英語教師の夫に聞いてみた

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