私、実は猫とはほとんど縁のない人生を送ってきました。

犬はライアン(フィリピン人の夫)のおかげで少しずつ慣れていきましたが、猫はずっと縁遠い存在。怖いわけでも嫌いなわけでもないけど、ただ関わりがなかった。そんな私が、気づいたら野良猫6匹の面倒を見ようとしていた話をしようと思います。
完璧にはできませんでした。むしろ、できなかったことの方がずっと多い。それでも書こうと思ったのは、フィリピンの野良動物をめぐる現実を、ここに実際に住んでいる立場から伝えたかったからです。
なぜ野良猫や野良犬が増えるのか
私が住むカビテ州アマデオは、今まさに住宅開発が進んでいるエリアです。あちこちに建設途中の家があって、現場がいたるところにある。
ここで知っておいてほしいことがあります。フィリピンの建設作業員の方たちは、現場にバラックを作り、工事が終わるまでそこに住み込むことが多いんです。
建設作業員の皆さんは遠くから来ている方も多く、寂しさから犬や猫をそばに置く。
問題は、仕事が終わると、その動物たちを置いて去ってしまうこと。
悪意があるわけじゃないと思います。ただ「そういうもの」として、動物を残していく。
私が関わることになった猫たちは、ほぼこうして増えた子たちでした。
住民も少なく、引き取り手もいない。猫たちはどんどん痩せて衰弱していく。犬はまだ残飯をもらえることもあるけど、猫はより人に相手にされにくい。犬たちは数を増やしてギャングを形成し、中には凶暴化するものも出てきます。実際、近所に犬や猫を殺傷しつづけている犬のグループがいて、うちの子も怪我を負わされたことがありました。
マニラなどの都市部では保健所が定期的に動くそうですが、田舎にはそういった施設が存在しない。NGOや動物保護施設は一応ありますが、大概は満杯で受け入れが難しいのが実情です。

あと避妊手術ですが、Kapon(カポン)といってローコストの避妊手術サービスが数多く存在しますが、そこは当然ながら自主的に出向かないと受けることができません。野良犬、野良猫に関してはまったくコントロールができていないのが実情なんです。
これが、私たちの住む場所のリアルです。
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雨の日の救出——KatKatとの出会い
その日は雨でした。
ライアンが犬たちを連れて散歩していると、路駐されていたSUVのそばで犬たちが何かに気づいた。車の下をのぞくと、猫の足がのぞいている。

雨と寒さから逃れようとエンジンルームに入り込み、抜け出せなくなっていたようでした。
車の持ち主の家に行き、ようやく出てきたご主人に事情を説明すると……なんか人ごとみたいな反応で、全部ライアンにやらせるんですよね。車庫入れもうまくできないのにでかいSUVの上に半身を乗り出して救出しようとしているライアンを見ながら、「あんたは痩せてるから身軽でいいな」とか言いながら。

上半身ぜんぶが車の中に。
ライアンは猫が嫌いです。
その猫嫌いの夫が、他人の車に半身を突っ込んで、見知らぬ野良猫を助けようとしている。私はその様子を、びっくりしながらただ見つめていました。
ようやく猫が出てきた瞬間、ライアンが言いました。
「男の子でしたー!」
※女の子です。三毛猫ですし。
姿を現した猫は、ぐったりしていてピクとも動かない。車の持ち主は「いやー大変だったね」と言いながら、ありがとうの一言もなく家の中に戻っていきました。
そのまま置いていくことはできなかった。私たちは猫を獣医に連れて行くことにしました。

診断結果は、猫コロナ、肺炎、各種ウイルス感染。そして——子猫を4匹妊娠中。
治療費は「えげつない価格」になりました。1日で25,000ペソ。
しかし子猫たちはすでに息をしておらず、全員助かりませんでした。
お医者さん曰く「お腹の中の子猫たちが、母猫を低体温症から守ったのかも」。
その子猫たちをビニール袋にまとめて、まるでスーパーで肉を買ったときみたいに、カジュアルにライアンへ手渡してきたんです。
「え、ここで処理してくれないの?」と白目になりました。
病院代があの金額なんだから、それぐらいしてくれると思ってた……。
正直に言うと、子猫まで面倒を見る心の準備はできていなかったので、ちょっとホッとした自分もいました。そんな自分に、また少し複雑な気持ちになったりもして。
病院に連れて行った以上、名前をつけないといけない。ライアンが適当につけた名前はKatKat(カッカッ)でした。
KatKatの4ヶ月
KatKatは、私以外には懐きませんでした。
ライアンには特に攻撃的で、近づこうものなら即座に爪が飛んでくる。私だって手を引っ掻かれて、ザクザクに流血したことが何度もあります。簡単に触れる猫じゃなかった。
それでも、1日2回の投薬を続けました。
天気の悪い日はライアンに頼み込んで、ケージに入れて家の中に。猫嫌いの夫に「お願い」と言いながら、なんとか折り合いをつけて。
4ヶ月後、KatKatはふっくら太って、健康な猫になっていました。
新しい飼い主を探しましたが、手応えはゼロ。KatKatの性格のキツさもあって、受け入れてもらえそうな人は見つからなかった。家への完全な受け入れも、猫嫌いのライアンがいる以上、難しかった。
でも彼女なりに、ここを安全な場所として頼ってくれているのは伝わっていたんです。攻撃的なのに、ちゃんと戻ってくる。それがわかったから、できる範囲で関わり続けました。
残りの猫たち、そして間に合わなかったこと
KatKatだけじゃありませんでした。
私たちの家がまだ建設中のころから居着いていた猫がいました。うちの犬たちにも慣れて、朝から日中は家のそばで過ごして、ご飯を食べて——気づいたら生活の一部になっていた子です。その子も、いなくなりました。

一度うちの犬たちを見て寄り付かなくなっていたんですが…。
この写真は、KatKatを助けた同じ日。この日を境にまた我が家に戻ってきました。
ガリガリに痩せた母猫と、その子猫たちも来ました。同じく、いなくなった。

みんな、同じタイミングで。
実は、猫たちをTNR(捕獲・不妊手術・元の場所に戻す)に連れて行く計画を立てていました。フィリピンには低価格で避妊・去勢手術ができるサービスもあるんです。
しかしすぐ連れて行けるっていうわけでもないそうなんですよね。
まず病気の有無を確認する。野良猫はほぼ何かしら持っている。だから先に普通の病院に連れて行って治療をして、授乳中の子は授乳が終わるのを待って、それから一匹ずつ手術へ——と。
無理に進めることもできたけど、ちゃんとやりたかった。
それが仇となりました。
丁寧にやろうとしていたから、間に合わなかった。
施設は満杯。受け入れ先はない。頼れるところが、極端に少ない。
それがこの場所の現実です。
おわりに
猫と縁のなかった私が、気づいたら深く関わっていました。
完璧にはできなかった。家に入れてあげることも、全員を守ることも、間に合わせることも。でも、できる範囲でやっていたのは本当のことです。
今でも思い出すと、きついです。
徐々に慣れてきた猫たちと、突然離れ離れになった。そのダメージは、思っていたよりずっと大きかった。猫との縁がなかった人間が、こんなふうに傷つくとは思っていなかった。
保護猫といっても、完全な保護からは程遠いことしかできなかった。
自由に外を歩く猫を閉じ込めることも、居たいだけ家の中に入れてあげることも、できなかった。それが今でも、少し引っかかっています。
それでも、庭には外猫用のシェルターをまだ置いています。捨てられなくて。また帰ってくるかもしれないし、別の助けが必要な猫がやってくるかもしれない。
次はもっとうまくやりたいな、とは思う。でも猫との相性もあるし、なかなか難しいもんですよね。
割り切れないけど、それでいい。たぶん。

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